「強く訴えないとイタリア人は言うことをきかないから」
現在は、政府も首相令を通して企業活動の制限を要請。労働活動が許可されている農業や工業の産業従事者や運輸・物流に携わる者でも、最低でも作業中は1メートル以上の間隔が保証されていなければならない。経済や日常生活もストップされている状況をストレスに思えても仕方のないところだが、ラウラさんは落ち着いていた。「強制も仕方ないと思う。感染が拡大している今の情勢では必要なことなのだし、強く訴えないとこの国の人は言うことをきかないから。もっと早くやっても良かったと私は思ってるわ」。
スマートワーキングに切り替えろというのも簡単な作業ではない。ミラノ在住の若手建築家マルタ・バルトリーニさんはこう語っていた。
「私の事務所では(アウトブレイクが確認された直後の)2月24日からスマートワーキングに切り替えるテストをしました。私たちの仕事はPCでの作業が主体になるから可能な感触もあったのですが、組織的なオーガナイズが必要だということも良くわかりました。建築技師の仕事は建築事務所だけでは完結せず、建築工事の現場と分断ができてしまったのです。その後は防疫のための対策をオフィス内でしっかりする方針にしました。外部との連絡は出来る限りビデオ通話にして、バスや地下鉄で外出する機会を極力減らすように努めました」
ただ現在は、首相令に従って完全に在宅のスマートワーキングに切り替えた。マルタさんを始め事務所の建築家は一人一人がサーバーを有し、内部会議や法人との連絡にもビデオ通話やチャットグループを活用しているそうだ。「それでもやはり、長くはこの状態を続けていられません」とマルタさんは言う。
「イタリア国内の建築業界はスマートワーキング化に慣れていないですし、返事を短い時間で貰うのにも時間がかかります。だいたい普通の時でもイタリアではモタモタしますし、これを機会にみんなが時間の使い方を再考してくれるといいのですが……。とにかく仕事のリズムが早く変えられるように願っています。家では父と机を並べて仕事をしていますし」
もっともミラノでは「まだまだバスや地下鉄に乗る人の数は多い」という話もある。スマートワークへの切り替えが全てに行き渡っていないのもまた現状だ。
北部からの“脱出”で医者にも感染広がる
そしてイタリアの他の地域にも、集団感染は現実的な脅威となっている。「私の故郷である南部プーリア州のマンドゥーリアでは、新型コロナの感染者が2人出た。そのうち1人は、ミラノから“逃げてきた”ウイルス患者を診た医者だそうだ。私の兄弟も医者なので他人事とは思ってないよ」。副業で執筆活動もしている、イタリア中部ペルージャのピエロ・マティーノ医師は言った。