フランスのベラン保健相が3月14日に、「イブプロフェンを服用すると新型コロナウイルス感染症を悪化させる可能性がある」とツイート。それがネットニュースとなり、大きな話題を呼びました(「コロナウイルスにかかったら飲んではいけない薬」2020年3月15日 Yahoo! ニュースJapan)。
炎症や痛みを抑え、熱を下げる薬(消炎鎮痛薬)であるイブプロフェンは市販の頭痛・生理痛薬の主成分によく使われているだけでなく、市販のかぜ薬(総合感冒薬)にも配合されている商品があります。たくさんの人が利用している薬なだけに、心配になった人が多かったのではないでしょうか。
「イブプロフェンは危ない」は本当なのか?
記事によると、「複数の医者が、発熱のためにイブプロフェンを服用した後、併存疾患がないにもかかわらず、重篤な状態に陥ったコロナウイルスの若い患者の例を挙げている」のだそうです。だとしたら、ただ事ではありません。
一方で、ウイーン大学医学部がツイッターでこの内容を「フェイクニュースだ」と否定したというニュースや、医師が「イブプロフェンを服用することによって新型コロナウイルスが増えるとか感染が激しくなるとか、あるいは感染しやすくなるというような論文は今までに一度も見たことがなかった」と語る記事も配信され、真偽のわかりにくい状態になっています(「『イブプロフェンで悪化』 『エアロゾル=空気感染』は誤り!? 新型コロナをめぐる“真偽不明”情報に注意」2020年3月17日 Yahoo! ニュースJapan)。
私たちはこのニュースをどのように受け止めればいいでしょうか。
1月から警鐘を鳴らしていた日本人研究者
イブプロフェンは非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs=エヌセイズなどと読みます)という種類の薬です。市販の痛み止めに使われている代表的なNSAIDsには他に、「アセチルサリチル酸(アスピリン)」、「ロキソプロフェン(ロキソニン)」などがあります。また、NSAIDsには分類されませんが、よく使われる消炎鎮痛薬に「アセトアミノフェン」があります。
実は、武漢で新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた1月頃から、NSAIDsを新型コロナウイルスに使うべきではないと警鐘を鳴らしていた研究者がいます。慶應義塾大学薬学部(旧共立薬科大学)や近畿大学薬学部で教授を務めた松山賢治さんです。なぜでしょうか。