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「もうすぐ電車、到着しますよ」

 駅員と一緒に階段を降りながら、彼は妙な気持ち悪さを感じていた。この駅員は走ってきたにもかかわらず、先程は全く息を切らすことなく、まるで機械音声の様な声で淡々と話していたからだ。それに普通は、電車の到着ホームが変更されるなら、構内放送で知らせたりしないものだろうか?

 そうした疑問も浮かんできたが、あまりこの駅員と会話をしたくなかったこともあり、彼は何も言わず、大人しく従う事にした。だが黙っていても、やはり駅員からは、何とも言えない不気味さを感じるのだ。

 結局、案内されたのは先程とは反対側のホームだった。そこに着くなり、「もうすぐ電車、到着しますよ……」と駅員は言い、来た階段を降りていく。それと同時に、電車がホームへ入ってきた。

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車内の乗客が一斉に彼のことを……

 到着した電車は座席が全て埋まり、つり革を掴んで立っている乗客が居る程に混んでいた。

「なんでこんなに混んでるんだよ」と苛立ちながら、彼は乗車した。というのも、いつも終電で帰る時には、ほとんど客は乗っておらず、座席で横になっても文句を言われないくらい空いているからだ。それなのに、今日は通勤時とさほど変わらないくらいの混雑ぶりなのだ。

 座れなかった事に不満を抱きつつ、なんとか空いている吊り革を握ると電車が発進し始めた。

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 すると、想像もしていなかったことが起きた。車内の乗客たちが一斉に、彼を凝視しはじめたのだ。サラリーマン、OL、学生……老若男女問わず、車内の全員が虚ろな目で、自分を無表情に見つめてくる――。

 その状況に彼は、怒鳴ることはおろか、一言も発することさえできなかった。全身に駆け巡ったのは、ただただ恐怖の感情だけだった。