自分語りはすれど説明はしない案里氏
起訴から100日以内に一審判決が出る「100日裁判」で、立道氏が禁固刑以上の有罪となれば、連座制の適用により案里氏が失職するが、罰金刑にとどまれば連座制の対象にはならないとみられている。案里氏は判決が出るまで議員辞職はせず、自民党に所属して議員活動を続ける意向を示している。
周囲によると、案里氏は昨秋の疑惑報道以来、克行氏とともに都内のホテルを転々としながら暮らしている。銀座三越にある洋菓子店へ買い物に出かけた時の様子が「週刊文春」3月12日号に激写されたが、普段は弁護士との会議をこなす以外の時間は、部屋で著名ピアニストの動画をスマホで流しながら、空を眺めたり、本を読んだりしているという。私の著書『無敗の男 中村喜四郎全告白』(文藝春秋刊)を読破したとも聞いた。
今回の事件に対し、世間の目は厳しい。だが、なぜ彼女はこうも「強気」なのか。
検事総長人事をめぐる官邸と検察の対立と、広島の地元政界における主流派・宏池会(岸田派)と案里氏が属する二階派の対立が事件の背景にある――ととらえ、一種の政治闘争として徹底抗戦する構えさえ覗かせる。
「セクハラなんて、甘い、甘い」
私は案里氏の周辺を取材しながら、彼女から聞いたこんな言葉を思い出した。
「(男性政治家たちからの)セクハラなんて、甘い、甘い。男の人たちの恐ろしさはもっと違うところにある。気に入らない女性を政治的、社会的に抹殺しようと、束になってつぶしにかかってくる」
一部報道では、ウグイス嬢の報酬を規定の2倍に当たる1日3万円にする方針が「河井ルール」と呼ばれていた点を指摘するが、地元関係者の間では「3万円は普通」とする証言もあるため、案里氏に近い人物は「『広島ルール』だ」と主張する。駐車違反のような感覚で法を犯す例も全国的にあり、選挙現場の実態と法が乖離していると説く専門家もいる。
だが、それでも、案里氏が無言を貫く姿勢が腑に落ちない。これほど冗舌に自分語りができる政治家なのだから、マスメディアを通して有権者に堂々と説明すべきだろう。
私にはいつでも聞く準備がある。