「勇敢であれ。すべては後からついてくる」
常井 河井さんの中で「母」になりたいという時期はなかったんですか。出産か、仕事かっていう。
河井 今まで、とにかく仕事で精いっぱいでしたよね。だって、主人の選挙もあるし、私の選挙もあるでしょう。それに、自分の幸せってあんまり私は考えたことがなくて。社会に貢献することのほうが自分の幸せだというふうに思ってきたんですよね。でも、今回の(参院議員の)選挙中とか本当につらくて。子どもとか見ると超かわいいじゃん。なんで私、こんな戦う人生選んじゃったのかな、ってすごい思った。
常井 なるほど。
河井 選挙中、パンダの動画とか毎日見て。子どもの頃、パンダになりたかったから。「ああ、やっぱりパンダに生まれておけばよかった」とかね。
常井 スマホでね。
河井 女性っていろんな生き方があるけど、男の人に守られて生きる生き方もあるので、そっちを選んだらどうだったのかなとか思いましたね。
常井 女性にとって子どもを産むか産まないかという選択自体も難しいし、決断のタイミングって本当に難しいですね。
河井 難しいです。でも、私、思ったの。今回は本当に大変な選挙と言われて、心が折れそうになることもあったけれども、やっぱり勇敢じゃなきゃいけないなと思って。「勇敢であれ。すべては後からついてくる」って、インドのネルー首相の言葉を書いてもらって事務所に貼ってもらってたんだけど。
常井 そんなことまでしたんですか。
河井 だけど、よくよく考えてみたら、妊娠して子どもを産むという以上に勇敢なことってないんですよ。世の中のお母さんたちというのは本当に勇敢だなと、私はすごく改めて思ったんです。だから、私もそういう女性の一員なんだから、きっと大丈夫って思って。やっぱり私たちは、本当に先輩の女性たちに道を開いていただいてきた世代なので、そういう意味では、私、肩の力が抜けてるんですよ。
常井 でも、広島県連の男たちがスクラムを組んで束になってかかってきた。これからも、肩の力は入れなくちゃいけない。
河井 そうですかね。でも、戦いのない人生というのはつまらないでしょう。
常井 これからの6年間、どんなことが起きるのか、楽しみですね。
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秘書が逮捕・起訴されても書面コメントのみ
さて、河井案里という政治家の本性が、少しは垣間見えただろうか。
このインタビューをもとにした拙稿が「週刊文春」に掲載されてから約2カ月後、案里氏は「渦中の人」となった。7月の参院選で、ウグイス嬢に違法な報酬を払う「運動員買収」に関与した疑いが浮上したのだ。スクープしたのは、「週刊文春」であった。
関与が疑われた夫の克行氏は「文春」が発売された10月31日に法務相を辞任。以降、夫婦で姿を消した。広島地検の家宅捜査を受けた1月15日には報道陣の取材に応じたが、3月に案里氏の公設秘書だった立道氏や克行前法相の政策秘書が逮捕・起訴された際には書面でコメントを出したのみ。私を含む、メディア関係者のインタビューには応じない。