“ストレス食い”と“過食症”はイコール
「怖くて体重は計っていないけれど、間違いなく増えてます……」
と反省の弁を口にはする。しかし、
「他にやることがないんだから仕方ないでしょ? そもそも私が悪いんじゃないでしょ? 悪いのはウイルスでしょ?」
と、やや切れ気味に反論もしてくる。かなりストレスが溜まっているようだ。
「精神的な抑圧を感じて食べ続ける行為を、医学的には“過食症”とよびます。過食症というとかなり重度の精神疾患のようなイメージを持つかもしれませんが、“ストレス食い”と“過食症”はイコールなのです」
と語るのは、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長で心療内科医の山本晴義医師。同医師によると、“ストレス食い”は、脳が感じているストレス状況に対して「食べる」という行為で抵抗している状態だという。
ストレスで食べ、食べ過ぎがまた新たなストレスに……
「“つらい”とか“いやだ”と思う気持ちを察した体が、その抑圧を解消しようとしたときに起きる欲求のあらわれです。適当なところで止まるならストレス解消法として役立つのですが、多くの場合は食べ過ぎてしまう。人間の体にとって“食べ過ぎ”という状況は正常な状態ではありません。そのため、“食べ過ぎ”という現象が体にとっての新たなストレスとなり、さらに食べ続けてしまうのです」(山本医師、以下同)
ストレスから「食べる」という行為につながるのは、大人ばかりではないという。
「指をしゃぶるのが癖になっている小さな子どもがいますが、あれは子どもなりのストレス回避策で、“ストレス食い”と構造は同じ。人間には、口に何かを入れることで欲求を満たそうとする本能があります。これを“口愛(こうあい)”と呼びますが、私たち人間に生まれながらに備わっているストレス解消法の一つなのです」