新型コロナ渦は、東京の観光街にも大きな打撃を与えている。
銀座に外国人はほとんど見当たらない。銀座8丁目の高架下にいた高速バスを待つ大量の中国人団体客は皆無。インバウンド向けのレストランは閑散としていた。
浅草はどうだろうか。昨年末、「翁そば」に行った時は、雷門から新仲見世通りはすごい雑踏だった。浅草に勤める知り合いの話では、3月に入って浅草は様相が一変したという。観光客は激減。そこで、そばの取材を兼ねて浅草に出かけることにした。
“外出自粛前”の浅草では……
訪問したのは3月23日、午後2時前。アルベール・カミュの「ペスト」にあるようなひとっこ一人いない状態になっているのかと想像しながら、都営浅草線の駒形橋側の出口から地上に出て、雷門方向に歩いて行くことにした。
「並木藪」に行列はなかった。そして、雷門方向へ近づいていくと、意外な光景が目に入ってきた。笑顔の若者らが集まっていたのだ。
卒業式を終えたとみられる袴姿の女子大生のグループや、友達同士でやってきてレンタル着物に着替えて人力車に乗る光景がみられた。外国人はほんの少しという雰囲気。
雷門の大提灯は4月17日に新しいものに取り換えるため付いていなかったが、その分、浅草寺が見渡せた。仲見世は大混雑。仲見世を東西に走る新仲見世通りは、抹茶ソフトなどの店が大行列。浅草寺も若者が参拝していた。いつもと変わらない様子に、少し危機感が走る。
しかし、伝法院通りを過ぎて、西参道あたりに行くとガクッと人が減る。六区ブロードウェイは超閑散。「翁そば」や「水口食堂」あたりも人はいない。昨年末とは一変。
新型コロナで売上7割減も……
そして、国際通りを渡った西浅草にある大正元(1912)年創業の「つるや」に到着した。「つるや」は友人である4代目店主の畑田務さん(51歳)と奥さんとお母さんの3人で切り盛りしている。畑田店主に挨拶し、街の変化などを聞いてみた。