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コロナで観光客激減の浅草、売上7割減の店も 100年続く老舗そば屋の“戦い方”とは?

2020/03/31
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 今見てきた様子を畑田さんに話すと、意外な回答が返ってきた。

「あれでも少ない方です。あんなの混雑とは言えないですね」

 なるほど、新型コロナ渦前は歩道も歩けないくらいだったという。インバウンド向けの高級店では売り上げ7割減だとか。そういう話をよく聞くそうだ。

国際通りを渡ったすぐの西浅草に「つるや」はある
歴史を感じる店内は落ち着いた雰囲気

「うちは観光客には左右されない」

「つるや」は売り上げ的にはそれほど落ち込みはないそうだ。

「うちはもともと地元相手なので、観光客やインバウンドには左右されないのでしょうね。ただコロナはこれからどうなるのか心配です」

「つるや」は一言でいうと、世相に左右されないで粛々と経営してきた地元に根付いている大衆的老舗店といえる。高い天井、そして、小上がりもある歴史を感じる内装。お品書きも渋い。歴史を十分感じることのできる店である。

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 昭和の戦後復興期は、出前が中心で従業員を数名雇って繁盛していた。その当時から、浅草の地元民や旦那衆が日常的に使っていた蕎麦屋である。

 そして、バブル崩壊。浅草は人が減り、シャッター通りと揶揄されるような寂しい街並みになった。それでも「つるや」は地元に寄り添って営業を続けた。近年のインバウンド好景気でも、意気込んで外国人を呼び込むこともなかった。

4代目店主の「変化球」

 さて、明るい話題に変えよう。4代目店主はただ粛々と経営しているだけではない。地元民にも愛される新しいメニューの開発にも余念がない。渋いお品書きの下に、新しいメニューが掲げられている。その中に「カレーそば」の変化球がちらほら。

4代目店主畑田務さんはいつも笑顔が素敵で勉強熱心
渋いお品書き

 昨年は、「カオソイ風のカレーそば」(800円)を夏季期間限定で発売して人気を博したそうだ。カレーそばの上に揚げたそば、温玉がのる。青唐辛子とニラの醤油漬け、レモンを添える。今年も販売するかもしれないという。

 今は「ちーずのせカレーそば」(850円)が人気だという。

昨年の夏に人気を博した「カオソイ風のカレーそば」(800円)