ロングラン上映中の映画「his」では、企画脚本のアサダアツシさんや監督の今泉力哉さんは異性愛者の男性ですが、ゲイの南和行弁護士の監修のもと、実際にあるホモフォビアを描いた上で、どうしたらそれを乗り越えられるか、さらにシングルマザーの問題など、ジェンダー格差の問題まで描き出しました。そういった、良きクリエイターを応援していきたいと思います。
松岡 批判も大事ですが、その倍くらいいい作品を褒めたいですよね。そしてそんな作品がちゃんと売れてほしい。そして次の世代にいい影響を与えられるようにしていきたい。
七崎 お2人の話を聞いていて、差別的な表現にNO!と言うことの大切さも身に沁みましたが、個人的には、いい作品を盛り上げていくほうが体力を奪われないし、希望をもてます。
松岡 希望でいうと、今回の署名も、多くの非当事者の方も署名しているんですよ。
一緒に怒ってくれる当事者じゃない人がこんなに増えている。変化が可視化されていると思います。いい作品を増やすというのもそうですし、ダメなものに対して一緒になって怒ってくれる非当事者の人がいるというのは、すごく可能性を感じます。
3人が過去に影響を受けたコンテンツ
七崎 お二人は過去に、映画などのコンテンツに影響を受けたことってありますか?
松岡 メディアでは「バイバイ、ヴァンプ!」に限らず「同性愛は笑いにしていい、性欲の塊だ」というような表現がまだまだ多いですよね。そういった表現に影響されて、学生の頃の私は「ゲイだとカミングアウトするのであれば、おもしろおかしくネタにするしかない。そうやって生き延びるしかない」って無意識に思い込んでいました。
それが間違っていることに気づけたのは、ジェンダーやセクシュアリティについて学んでからですが、そもそもあの頃に「バイバイ、ヴァンプ!」みたいな表現物ではなく、エンパワーされる作品に出会えていたら……。「そっか、自分のセクシュアリティを笑いにしなくても、隠さなくてもいいんだ」って気づけていたんじゃないかなと思います。
結局、マイノリティ側ってマジョリティが作ったものに影響を与えられて、スティグマとか、レッテルを貼られていることが多いと思います。