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「インドカレーを全肯定してはいけません」水野仁輔と小宮山雄飛のカレー談義 #2

インドカレーを全肯定する人たち

水野 小宮山君はまだインドに行ってないんだっけ?

小宮山 行ってないです。

水野 行ったほうがいいと思うよ。ほんとに魅力的だから。

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小宮山 そう、これは行かないといけないんですよ。

水野 でも、行った後に小宮山君がもし帰ってこなかったら、その時は俺が「小宮山君、ちょっとそろそろ帰ってきて」って言わないとね。僕の周りでいっぱいいるから。インドに行って帰ってこれなくなっちゃった人が。そういう人たちは、インドカレーを全肯定して、それ以外のカレーを全否定し始めるわけ。もし小宮山君がそうなっちゃったら、一応「ちょっと待って」と言おうと思うけど、大抵そういう時って聞く耳を持ってくれなくて、「水野君も変わったね」とか言われたりするんだよ(笑)。

小宮山さん自作の「麻婆カレー」

小宮山 「昔はインド、インド言ってたのに」って(笑)。

水野 だから、ちょっとそこは怖いんだよね。

小宮山 でも僕はそれ、ないだろうな。水野君が前を走ってるからね。しかも、わからないことがあったら一番簡単な手は、とりあえずメールで「あのスパイスってどうなの?」って聞けばいいから。

水野 水野が犯した失敗を「ああ、あそこはとおっちゃ駄目なんだな」と。

小宮山 あと、「あいつ本当に分かってるのか? インドにも行ったことないのに」と言われた時に、「違うんです。これ、水野君から聞いたんです」っていう、逃げ場があるからね。

水野 なるほど(笑)。でも、1回はインドに行ったほうがいいよ。

音楽界のカレー王は誰だ?

小宮山 僕は5年くらい前に『dancyu』の企画で料理研究家の渡辺玲さんにカレーの作り方を教わって、カレーの道に入ったんだけど、そのレベルだとみんな仲良くしてくれるんですよ。水野君もそうだし、フードライターの小野員裕さんも渡辺さんもそうだし。

水野 まあ、本業がミュージシャンだから、この人は自分の領域を侵してくる人じゃないっていうのがあるんでしょうね。

小宮山 そうね。だからゴスペラーズの黒沢(薫)さんだけ、ちょっと気にしてるかもしれないけど(笑)。

水野 黒沢さんに限らず、音楽業界はちょいちょい気にしてる人がいると思う。だって、音楽業界はカレー好きがあまりに多いからね。

小宮山 多い、多い。

水野 だから、小宮山君が出したカレー本の『簡単!ヘルシー!まいにちカレー』(主婦と生活社)の帯に「音楽界のカレー王」とか書いちゃったらちょっと黙ってない人が多そうな気がするな、と。これが一番気になった。

小宮山 これは僕も気になったよ。この帯のコピー付けたの担当編集者ですよ。だから「カレー王は外してください。少なくとも黒沢さんのほうが全然詳しいし、カレー王じゃない」って言ったんだけど「いや、ここは言いきっちゃいましょう」って。

「カレースター」の著書(左)と「音楽界のカレー王」の著書

水野 でも、こうやってカレー王を名乗ったからには、音楽業界にカレー王国を作ればいいんだよ。諸先輩方の中に熱狂的なカレーファンが結構いるわけじゃない。音楽王とは言ってないわけだから、「カレー王国ちょっと作ったんでどうですか?」って、巻き込んでいくのはいいと思うな。

小宮山 確かにね。でもおかしいよ。「音楽界のカレー王 小宮山雄飛(ホフディラン)」って。逆だよ(笑)。

水野 そうだよね(笑)。だから、ホフディランがアルバムを出した時はこれがひっくり返るんじゃない? 「ホフディラン小宮山雄飛(カレー王)」。

小宮山 でも水野君の肩書の「カレースター」もそうじゃない?

水野 カレースターなんか完全にそう。糸井重里さんが名付けてくれたんだけど、正直、カレースターも、小宮山君のカレー王と同じぐらいの感覚で。

小宮山 でも今日、カレースターのTシャツを着て来てる(笑)。

水野 そう。「東京カリ~番長」を脱退しちゃったから、何か分かるアイコンがあったほうがいいと思って。小宮山君はカレー王国のTシャツとかを作ったらいいんじゃない(笑)。

小宮山 カレー王国でかー(笑)。

◆ ◆ ◆ ◆

水野仁輔(みずのじんすけ)/1974年静岡県出身。1999年に出張料理集団「東京カリ〜番長」を結成。これまで出版してきたカレー本は40冊以上。2016年春、本格カレーが作れるスパイスセットを毎月届けるサービス「AIR SPICE」をスタートした。

小宮山雄飛(こみやまゆうひ)/1973年東京都出身。ホフディランのVo&Key担当。ミュージシャンのかたわらグルメにも精通し、雑誌連載やカレーレシピ本出版など食のシーンでも活躍。地元渋谷区の観光大使も勤め、食に渋谷に音楽に、 POPな日々を送っている。

撮影/末永裕樹(文藝春秋)

(#3に続く)


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