深浦「7局目は自分もそわそわしていました」
――深浦先生も、木村先生を応援されていましたよね。
深浦 そうですね。この7局目は自分もそわそわしていました。この日、自分は叡王戦の予選で久保さん(利明九段)と対局があったんです。木村君が王位を取ったら、打ち上げに行こうという心づもりだったんですけど、いろいろプランがダメになってしまって。
――プランですか?
深浦 ええ。まず将棋を勝って気持ちよく行こうと思っていたら負けてしまって。次に対局後に副立会人の飯島くん(栄治七段)に電話したんですけど、もう打ち上げの最中みたいで電話に出てくれず(笑)。結局、場所がわからないので合流できなくて、木村さんに「おめでとう」のメールだけしたんですよね。実は、自分的には散々な一日でした(笑)。
広瀬章人竜王に豊島将之名人が挑んだ竜王戦は「ちょっとプロ好み」
――王位戦に続いて票が多かったのは、広瀬章人竜王に豊島将之名人が挑んだ竜王戦。こちらも豊島将之竜王・名人が誕生した第5局が人気でした。
〈終盤、広瀬竜王も控え室の検討陣も先手玉が詰むと思っている中、豊島名人だけは分からないながらもまだ詰みを読み切れないから、と諦めずに指し続けて、結果奇跡的に詰みを逃れていたということに感動したため。また、序盤も豊島名人の新構想が面白く、中盤の広瀬竜王の攻め込みもスリリングで観ていて楽しく、まさに序盤中盤終盤隙のない名局だと思います〉(29歳/女性)
深浦 竜王戦も盛り上がりましたよね。
遠山 内容がとても濃かったです。
深浦 ただちょっとプロ好みでしたかね。プロが楽しんじゃう竜王戦でした。解説する自分たちもがんばって伝えましたが、ちょっと級位者の方には難しかったかもしれません。
藤井猛九段が藤井システムで羽生善治九段に勝った叡王戦
――続いて人気だったのが叡王戦の九段予選で、藤井猛九段が藤井システムで羽生善治九段に勝った将棋です。
〈藤井先生が藤井システムを指すだけでも最高なのに、相手が羽生先生、しかも勝ってしまうという。観る将が沸き立つ要素が詰まったエンターテイメント感溢れる対局だったと思います〉(41歳/女性)
――観る将から人気の高いお二人の対局に「藤井システム」発動ですから、ファンも大いに盛り上がりましたね。深浦先生は以前、羽生先生のことは「特別気になる存在」だと話しておられましたが、やはり将棋もよくご覧になりますか?
深浦 そうですね。それで1年に一度は対局したいと、気持ちも高めています。
遠山 羽生さんといえば、A級順位戦の渡辺明(三冠)戦もめちゃくちゃ面白い将棋でしたけどね。
――2票入っていますね。
〈順位戦で羽生九段から勝ったことがなかった渡辺明三冠の勝局。その後名人挑戦を決めたこともあり、この一番が大きかったと思います。平成を彩ったゴールデンカードは令和に入っても色褪せずゴールデンカードでした。AbemaTV解説の藤井猛九段の「あんまり名局名局言うのも安っぽくなっちゃうけど、名局ですね」というコメントも印象的でした〉(29歳/女性)
遠山 ゴールデンカードといわれた対局ですが、2019年度でいえば他にもいい将棋が多かったですね。