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藤井聡太、羽生善治、木村一基……将棋ファンの胸を熱くした今期の「名局」は?

藤井聡太、羽生善治、木村一基……将棋ファンの胸を熱くした今期の「名局」は?

観る将アワード2019・完全中継 #1

2020/04/04
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将棋界に世代交代の波がきている

――世代交代なのでしょうか。

遠山 そうですね。2019年度9つある順位戦の昇級枠は、20代で7つを占めて、残りは10代の藤井聡太七段と、40代の丸山忠久九段。確実に世代交代の波はきているのですが、そんななか深浦さんがNHK杯で優勝をされて(笑)。

深浦 木村さんに影響されたということにしておいてください。

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――早指し棋戦は、若い人が有利だと思っていたのですが、それは素人考えですか?

深浦 いやぁ、若い人が有利だと思いますよ。

 

――ただNHK杯は、2018年度もベスト4はすべて40代で、今回も深浦先生が優勝されておられます。

深浦 でもこれがずっと続くとは思いませんね。今は、たまたまベテラン陣が選んでいる戦型がうまくいっているだけで、若手はやはりいろんな形を押さえていますから……。ただ、木村さんも勝っているんですよね。去年、フィッシャールールで行われた木村さんの対局を解説したんですよ。

――「第2回AbemaTVトーナメント」ですね。

深浦 木村さんは予選4戦全勝で、本戦準決勝でも藤井聡太さんに1勝2敗とあと一歩まで迫ったんですけど、収録の途中にすれ違ったら、ボソッと言われたんですよ。「深浦さん、けっこう勝てますよ」って(笑)。

――わはは(笑)。

遠山 木村さんらしい(笑)。

170手を超える大熱戦になった深浦九段と豊島さんの対局

――早指しといえば、朝日杯将棋オープン戦の深浦先生と豊島さんの対局にも票が入っています。

〈両者の驚異的な生命力。延々続く1分将棋の中での超ハイレベルな攻防。最後の最後、深浦九段の壮大な寄せ方も印象に残った〉(31歳/男性)

遠山 これはすごい将棋でした。

――ハラハラドキドキしながら見守っていました。

遠山 1分将棋になってからもなかなか終わらず、結果170手を超える大熱戦になりましたね。

 

――この豊島戦に勝ってから、次の千田翔太七段との対局までほとんど時間がありませんでした。

深浦 控え室に戻ってお弁当も食べましたが、ほんとにつまむ程度。あの日、屋敷さん(伸之九段)の誕生日で、控え室にショートケーキもあったんですが、残念ながら食べられなかった(笑)。

――2局目となった千田七段との対局も大熱戦でしたが、ヘトヘトになりませんでした?

深浦 もうハイになっていたのでそれほど疲れは感じませんでした。あれだけ長い時間集中しているとけっこういい気分なんです。

――千田戦に敗れたあと、インタビューで「電車で30分の有楽町が遠いですね」という発言も注目されましたね。

深浦 後で朝日の記者さんが裏を取りにきたんですよ。「ご自宅から有楽町まで、本当は40分じゃないですか?」って。さすが記者さんですよね(笑)。