「観る将」の視点から、2019年度の将棋界を振り返ってみる「観る将アワード2019」の中編となる本稿では、「ベスト解説者&聞き手」「Twitter&文章」2部門の発表を深浦康市九段と遠山雄亮六段による選考座談会の模様とともにお届けする。

 まずは、あまり解説をしていないのにもかかわらず「将棋の強いおじさん」が多くの票を獲得した「ベスト解説者&聞き手」から始めよう。

あまり解説していないのに解説者トップの木村王位

――観る将的には、対局者と同等、もしくはそれ以上に愛着のある解説者と聞き手ですが、まずは解説者の話から始めましょう。アンケート結果をみると、解説者では同数でトップが二人おられました。まずは木村一基王位です。

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〈私はほぼほぼ棋力がないに近いのですが、将棋をわからない初心者が将棋の放送を楽しめるのは木村王位の解説だったと思います〉(45歳/女性)

〈木村王位の解説は単純な面白さがあります。サービス精神旺盛で人を笑わせる術を身に着けていらっしゃる方が、惜しみなくその能力を発揮してくださるので、「長考」などの空白の時間も「楽しい将棋」を見る時間に変わりますね〉(38歳/男性)

遠山 木村さんはタイトルを取ったこともあって、今期はあまり解説していませんよね。

解説者としても絶大な支持を得ている深浦康市九段

深浦 やってないよね。

遠山 それなのにこれだけ票を集めるのは、やはりすごい人気ですね。木村さんの解説は、軽妙なトークで最後に必ずオチがつくので初心者にもやさしいんですけど、実は話している指し手の内容はかなりレベルが高い。その二つが両立しているのがすごいです。

「『わっしょい!』はもともとは藤森くんのことばなんです」

――そしてもう一人のトップは深浦先生でした。解説のお仕事は、どれくらいされていますか?

深浦 月に2回くらい、年間でいえば20回くらいでしょうか。

――印象に残っているので、もっと多いように感じていました。

遠山 その間に対局もしているので、20局はやはり多いですよね。なかでも、みんなの印象に残っているのは「観る将的名局賞」でも話題になった藤井聡太七段と佐々木大地五段の対局でしょう。

〈深浦九段は人に話を聞かせるテクニックがとても上手で引き込まれてしまいます。エピソードの引き出しが多く、時には弟子愛溢れるトークもとても好きです。聞き手の方や棋士の方に質問して話を聞き出して貰えるのが見る将にはとてもありがたいです〉(29歳/女性)

〈わっしょい等の言葉は、深浦先生ファンではなかった人たちを取り込んでいきましたので、誰も文句はないと思います!〉(22歳/男性)

遠山 あの盛り上がりは、藤森くん(哲也五段)と一緒だったからというのは大きいですね。

深浦 藤森くんだったから「わっしょい」も生まれたので。

遠山雄亮六段は、初心者向けの解説書『将棋・ひと目の歩の手筋』を刊行したばかり

――「わっしょい」は、もともとあることばなんですか?

深浦 もともとは藤森くんのことばなんですよ。たしかアベマさんで見て「面白いことばを使っているな」と思っていたんです。それで藤森くんとペアになったらいつか使おうと狙っていました(笑)。