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役作りでは「説明セリフは言うな」と言われました

——私は思い出す。三國の手元にあった何冊かの台本。筆で、大きく×と書かれた台本。考えて、苦しんで、それでも受け入れられなかった台本があった。

 三國連太郎は才能だけで、伝説になったのではない。ずいぶん、「じたばた」した。そう、聞いている。

©︎文藝春秋

佐藤 芝居の話は三國とよくしました。距離感はありましたが、それほど仲が悪かったわけでもなかったし。

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 役作りについて、二次元から三次元にするという言い方を僕はするんだけれど、三次元にするまでにどれだけの苦労があるかというのは、三國から学ばせてもらった部分もあります。

 若い頃は「説明セリフは言うな」と、さんざん言われました。僕の返答は、「説明セリフを説明セリフにしなければいいだろう。そのための努力じゃないのか」でした。

 僕は、彼の持論そのままを受け入れたわけではなく、自分で構築したと思っています。こういうことに、正解はありませんから。

——三國と佐藤、この親子はやはり独特だ。父の影は重ならないようで絡みつき、息子の思いは冷めているようで、熱かった。 

三國連太郎、彷徨う魂へ

宇都宮 直子

文藝春秋

2020年4月8日 発売