橋の工事のコストは?
「国土交通省を始め長野県や上田市等のご指示を受けながら調整させていただいた結果、千曲川橋梁部分を上田市の保有として、国の特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助の指定を受けることができ、総事業費の大部分を国が負担していただけることとなりました。残りの部分については上田市が負担していただける事になり復旧への見通しが立ちました」(矢澤さん)
ここ数年、全国的に自然災害が相次ぐ中で、被災したローカル鉄道の復旧に対する補助などの制度も充実してきた。そのおかげもあって、こうした柔軟な対応により復旧を進めることができるようになったというわけだ。
「やっぱり赤い橋に電車が走らないと寂しいよね」
「地元の方からも、『やっぱり赤い橋に電車が走らないと寂しいよね』というお声をいただくんです。それだけ、千曲川橋梁は上田の町にとって重要なシンボルなんですね」(矢澤さん)
地元の人たちからも援助の手が差し伸べられている。沿線にある長野大学の学生たちが募金を募って中吊り広告を掲出。デザインはもちろん学生たちが自ら手がけたものだ。さらに、思わぬ出会いもあった。別所温泉を訪れた歌手の松任谷由実さんが上田電鉄の電車に乗って「力になりたい」と中吊り広告にサインをしてくれたのだ。
「台風の被害でいろいろ大変でしたが、全国の方々からの応援のおかげでなんとか進めていけている。松任谷由実さんの応援もとても力になっていますし、市民の皆さんや学生さんがいろいろやってくれているのもとても嬉しいし心強いですね」(矢澤さん)
東日本を中心に広く甚大な被害をもたらした台風19号の襲来から半年。上田電鉄の復旧はまだ道半ば。市民生活への影響も続いている。直接被害を受けないと、どうしても時が経てば忘れてしまうもの。だが、ときにはこうして被害から立ち上がろうとしている町のことを思い出すことも必要なのかもしれない。