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“最強”台風19号から半年 「廃止されるかも」“赤い橋”落ちた長野のローカル線の逆襲

「上田電鉄が赤い橋を走らないと寂しいよね」

2020/04/13

マイカーにシフトした利用者もいたが……

「ただ、どうしてもお客さまにとっては不便ですよね。別所線のお客さまは、上田駅周辺やしなの鉄道へ乗換える通勤、通学のお客さまが多いので時間のかかる上田~下之郷をバスで運行していた時は、車にシフトしてしまった利用者が多かったですね」(矢澤さん)

 今は城下駅まで、つまり上田駅まであとひと駅のところまで電車で行くことができるが、それでもバスは渋滞に巻き込まれる恐れもあり、どうしてもマイカーの利便性にかなわない部分もあるのだ。

「別所線のダイヤは上田駅で北陸新幹線やしなの鉄道線と接続するように組まれています。代行バスが渋滞して遅れました、というわけにはいかないので、その分余裕をもったダイヤにしているんです。ですから所要時間も少し増えていますし、やはりご迷惑をおかけしているという思いはあります」(矢澤さん)

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上田駅からの代行バス。地元の学生に利用されている ©鼠入昌史

全線復旧はいつ?

 矢澤さんに話を聞いたのは運行の拠点にもなっている下之郷駅。筆者も上田駅から代行バスと電車を乗り継いで下之郷駅までを往復した。下り電車(上田~城下間はバスですが)には地元の学生と思しき若者たちが20名近く乗っており、バスから電車への乗り継ぎにも小さな列ができるほど。バス代行輸送があるのはありがたいが、やはり早い復旧が望まれる。全線復旧はいつ頃が目処なのか。

「来年の春を予定しています。すでに落下した橋梁部分の撤去が終わり、現在は橋台部分の工事などを行っています。千曲川の水量が増える6月以降は河川内の工事ができないので、新しく架ける作業は秋から。それで、復旧は来年の春になってしまうんです」(矢澤さん)

 ここで気になるのは、一部分とはいえ橋梁の架替には安くないコストがかかる。とうてい上田電鉄だけで負担できるものではないだろう。

すでに落下した橋梁部分の撤去が終わっている。千曲川の水量が増えるため、新しく橋を架ける作業は秋から行う予定 ©上田電鉄
上田城跡公園の桜。来年の全線復旧のころ、見ごろを迎えるだろうか ©時事通信社