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「ガンダム」「ヤッターマン」メカニックデザイナー大河原邦男のデザインマンホールが爆誕

マンホーラーの巡礼――多摩編 #1

2020/04/22
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青梅市――篠原ともえデザインの「ゆめうめちゃん」

 青梅市初の公式キャラクター「ゆめうめちゃん」は青梅市出身のタレント、篠原ともえによるデザインだ。LINEスタンプ、原付バイクのナンバープレート、公式グッズなどにも活用されている。

青梅市 ゆめうめちゃん蓋(スタンプラリー対象)(マンホールカード特別版)
住所:東京都青梅市本町171-2 青梅駅前 ほか8か所あり

 マンホール蓋のゆめうめちゃんはデザインが省略されている。そこが良い。キャラクターの個性を鋳物で表現するために最適化し、鋳物の安定感を背景にシンプルさを魅力としている。やや凡庸さを感じるが、カラー樹脂の充填面積の広さには静謐さがあり、鋳肌が梨地にザラリと仕上げられている様はたまらない。鋳物の太い線はシンプルに特徴をとらえ、これが鋳物の蓋の良さであるといわんばかりだ。不動ともいえる安定感を放っている。

 全部で9枚製作し、市内各所に設置した。9枚、同じ蓋だ。青梅市によると「観光資源としてこれらのデザインマンホール蓋を活用し、市内の回遊性を向上させることで観光客の誘致促進及び地域活性化を図る」としている。しかし、まったく同じものをバラバラと設置されても全部見たいとは思わない。駅前の1枚を見たら満足してしまう。なぜ回遊性が向上すると思ったのか小一時間問い詰めたい。

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青梅市 ゆめうめちゃん蓋

 北区田端に設置された「のらくろ蓋」のように駅から5分ほど離れたところに1枚設置すれば、駅から散策しつつ設置場所まで回遊する動線が生まれる。青梅は設置の仕方に工夫が足りないんじゃないだろうか。観光客の誘致促進よりも地域活性化を目的としているなら納得できる。近年生まれたばかりの「ゆめうめちゃん」自体を広報したかったのかもしれない。

 映画看板、昭和レトロ商品博物館などを仕掛けてきた青梅は面白い街だ。新しいデザインマンホール蓋でも、まだまだ面白いことを仕掛けてくるんじゃないかと期待している。きっとする。今後に注目していきたい。

あきる野市――間違いなくプロの仕事だ

「森っこサンちゃん」はあきる野市のイメージキャラクターだ。1種類15枚設置した。青梅市と似ている。

あきる野市 森っこサンちゃん蓋(スタンプラリー対象)
住所:あきる野市舘谷台16 武蔵五日市駅前 観光案内所前 ほか14か所あり

 キャラクターの雰囲気にあったシンプルな絵柄のタッチ。それでいて、すべり防止効果の高い良いデザインだ。鋳物らしさも良く出ている。間違いなく鋳物の蓋をデザインするプロの仕事だ。何から何まで分かっている。単純化しているが単調になっていない。鋳物デザインのツボを押さえている。リズミカルな外周の凹凸も良い。音楽的な軽快さを鋳物の風景にあたえている。楽しい。2種類使い分けている手書き風フォントのバランスも良い。こういう良いデザインマンホール蓋を見せてもらうとウキウキしてくる。

 同じ蓋を多数設置しているため、旧来の下水道広報系デザインマンホールの設置手法に似ている。一部の蓋はカラーにしなくても良かったんじゃないかと思う。非カラーがあれば、そっちも見たくなる。コストを下げて回遊性を高めることができる。キャラクターだけカラー化する変化球も良い。色替えしてマニア泣かせ(喜ばせ)なシリーズ展開も考えられた。何故15枚作るのか。観光資源系デザインマンホール蓋なら、そこまで考えると良いと思う。

あきる野市 森っこサンちゃん蓋

 この蓋はなんとなく180度ぐらいの方向性を持っている。キャラクターが180度ほどの角度で配置されている。うまい。非方向性を意識した親切なデザインだ。なるべく広い角度から鑑賞できるように設計されている。それが良いデザインの条件というわけではないが、違和感なく仕上げたデザイナーの力量を感じることができる。