忍び寄るパンデミックの第二波
――いま中国が抱えている懸念材料は何でしょうか。
宮家 気がかりなのは、パンデミックの第二波、第三波です。たとえば、中国ではいま海外からの感染流入が深刻化しています。中国政府が4月13日に発表した数字では、新規感染者108人のうち海外から感染者が入国した例は98人を占めています。
20世紀初頭に起こったスペイン風邪(インフルエンザ)のときにも、パンデミックは第二波、第三波と起こり、何年にもわたってその影響が続きました。
中国は統制社会だからこそ出来る強引な都市封鎖を実行して事態の収拾を図り、4月8日には武漢の封鎖を解除するなど沈静化をアピールしました。しかし、その締め付けの反動から一気に人の往来が戻りつつある。この状況で国外からこうしたウイルスが入ってくれば、再び感染者が急増することもありえます。
そうなってしまえば、一気に中国社会が動揺しかねません。ニューヨークでも医療崩壊が叫ばれていますが、世界で最初に医療崩壊が起こったのは中国の武漢でした。当時は、医療体制ばかりか、国家体制まで揺るがしかねない事態でした。
事態を真っ先に告発し当局から処分を受け、その後感染によって亡くなった李文亮医師は今回の事態を悲劇的に象徴する人物ですが、3月になって、中国当局は、李医師の処分を撤回し、家族にも謝罪しています。当然ながら中国政府は彼への圧力や封殺を認めたくなかったはずですが、認めなければ国内世論の悪化を食い止められないところまで、習近平体制は追い込まれたわけです。
そうした焦りが現れたのが、3月12日に中国外務省の趙立堅・副報道局長の「米軍が疫病を武漢にもたらした可能性がある」という“フェイクニュース”のツイートです。万一、パンデミックの第二波が来れば、再び習近平体制への批判が高まるでしょう。