霞が関官僚の間で評判になっているのが農水省の食堂。日本の農林水産行政を司る官庁だから、食べ物もうまい、ということだろうか。ここにはもちろん、そば屋も入っている。「日豊庵」である。

 

行列している人たちのほとんどが注文するメニュー

 8月初旬の暑い日。午前11時30分過ぎに農水省北別館の入口に到着した。入口から警備員さん越しに店を見るとすでに行列ができている。ワイシャツ姿の農水省官僚とおぼしき紳士や淑女、中にはジョギング途中に立ち寄っているツワモノが点在している。この日は「こども霞が関見学デー」だったこともあり、親子連れもたくさんいた。興味深い光景だ。

 行列に並んで5分、食券売り場に近づいた。行列している人たちのほとんどが2食そば500円を注文している。2食そばとは「日替りそば」(コロッケそば、カレー南蛮そば、かきあげ天そばなど)と、やや小さいどんぶりの「冷し野菜そば」のセット。どんぶりが2つそろったボリューム満点の人気メニューだ。

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2色そば。この日はかきあげ天そばとのセットだった

「冷し野菜そば」は「日豊庵」の神髄、真骨頂といってもよい一品である。

 この「冷し野菜そば」、正確には「冷し野菜炒めそば」という。野菜炒めだけど、冷やしている。単品は390円。

 食券をトレイにのせて、そのままカウンターに並ぶ。食券と引き換えに「冷し野菜いためそば」を受け取る。店内には大量のワサビや柚子胡椒が置いてあるので、スプーンですくって薬味にする。

 この素っ気ないガランとした店の造作がなんとも潔いのだ。長テーブルを省内の会議室に並べたような造作に思わずうなる。