政府が発令した「緊急事態宣言」の対象となった大阪府。4月に入って感染者数は右肩上がりで増加し、9日には92人の感染が確認されるなど、これまでとは次元の異なる危険水域に入りつつある。

 そうした中、大阪府の吉村洋文知事が「文藝春秋」5月号のインタビューに応じ、一連のコロナとの闘いを振り返るとともに、オーバーシュート(感染爆発)に備えた今後の対策について語った。

吉村洋文・大阪府知事 ©共同通信社

「先手先手」の対応でクラスターを潰した

 吉村氏がインタビュー中、繰り返し口にしたのは「先手先手」の対応を取ることの有効性だ。知事がそのことを実感したのは、日本で最初のクラスター(小規模な感染集団)が発生した大阪・京橋のライブハウスを巡る対応だったという。2月末、吉村氏は大阪市の松井一郎市長と相談し、店の名前を公表することを決めた。

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「店の名前をオープンにして注意を呼び掛ければ、追跡調査を徹底的に行うことができる。ライブの参加者に『自分も感染しているかもしれへん』と気付いてもらえれば、新たなクラスター増殖を防ぐことにも繋がります。ライブハウスの協力はどうしても必要でした」

クラスターが発生したライブハウス ©共同通信社

 風評被害などのリスクがありながらも、ライブハウスは店名を公表することを受け入れた。吉村氏は「経営者の決断に、心から感謝しています」と振り返る。

「もしライブハウスの名前をオープンにしなければ、100人単位の人が気付かぬうちに感染を広げることになっていました。2次感染、3次感染を招き、大阪は今、コロナの感染者で溢れ返っていてもおかしくなかったと思います」