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「なんでやねん!」ではなく「どういうお笑い?」

 例えば、千鳥が海岸でロケをしていたときに、大悟は誰かに突き落とされたわけでもないのに、自分からきれいなフォームで海に飛び込んでいった。そんな彼に対してノブは「なんでやねん!」などと責め立てるようなオーソドックスなツッコミをせず、やや下から目線で「どういうお笑い?」と問いかけた。これが典型的な嘆きツッコミである。

 さらに、ツッコミのワードセンスにも年々磨きがかかっている。そこには「クセがすごい!」のような独創的な言葉もあれば、「目が文化包丁みたい」のような技巧的な例えツッコミもある。「言い方」と「言う内容」の両方が格段にレベルアップしたことで、ノブは当代随一のツッコミと呼ばれるまでになった。お笑い養成所に通う昨今の芸人志望者の中には、ノブのツッコミに憧れる者が多いという。

 ノブのツッコミが特に冴え渡っているのが『相席食堂』(朝日放送)だ。この番組では、ゲストが一般人と触れ合うロケのVTRを見ながら、スタジオで千鳥がツッコミを入れていく。面白いポイントをいち早く見つけて的確な指摘をする2人の芸術的なツッコミ芸が堪能できる番組だ。大阪のローカル番組だが、TVerやAmazonプライム・ビデオなどでも視聴可能であり、お笑い好きには必見の番組である。

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TVerやAmazonプライム・ビデオなどでも見られる『相席食堂』(朝日放送)

 昨今、ぺこぱの松陰寺太勇による「否定しないツッコミ」が話題だが、ノブの「嘆きツッコミ」も同じようにツッコミの歴史の中では革新的なものだった。岡山弁の柔らかさと「嘆き」のニュアンスによって、ノブのツッコミには優しさが漂う。ツッコミは「怒り」として表現されることが多いのだが、それを「嘆き」に変えたことで、ノブは新時代のツッコミの開拓者となった。