「この番組は2月8日に収録したものです」

『水曜日のダウンタウン』(TBS)の冒頭、画面上部にそんなテロップが表示された。なにかあったかな? と思ったが思い当たるところはない。今のご時世だから、新型コロナの感染防止にそぐわないVTRがあったのかな、と漠然と思った。

 番組はいつものようにプレゼンターがスタジオにやってきて「説」を発表。それを検証するVTRを流すという流れで進んでいく。けれど、どこか違和感があった。この日の最初の「説」は「下層YouTuber地獄説」の第2弾。チャンネル登録者の少ないYouTuberの動画のクオリティの低さを紹介するもの。VTRが進むにつれ違和感の正体に気づいた。いるはずの人がいないのだ。こうしたヒドめのVTRを見ると誰よりも大笑いをしてワイプで抜かれていた男が。

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 浜田雅功だ。

ダウンタウン ©共同通信社

 思えば、本来MCの浜田が言っていた部分がナレーションで処理されていたり、スタジオのトークもなんとなくぶつ切れ感があったし、画面の映し方も変。スタジオ全体を映す引きの画(え)もなかった。昨年、芸人が諸問題で謹慎した結果、様々なバラエティ番組で見た不自然な編集を思い出す。2本目の説のプレゼンに入ってそれは確信に変わった。浜田がいない。SNSでも「どうしたんだ?」とざわざわしている。インフルエンザで休んだんじゃないか、という書き込みもあったが、それはありえない。なぜなら、浜田が休んだとしたら松本人志がそれをイジらないはずはないから。注意して見ていると、出演者がいつも浜田がいるところに目線を向けているのもわかる。明らかに切られていた。だったら、なぜ浜田が映ってはいけないのか。当然、脳裏によぎるのは、何か問題を起こしてしまったのではないかということだ。不倫などなら肝のすわったこの番組のスタッフが切るわけがない。ならば、反社会勢力との付き合いや事件を起こして逮捕か……。この後、楽しみにしている彼が出演している番組も見れなくなってしまうのか。そんなことを想像して勝手に哀しくなってしまっていた。

 そして番組終盤、プレゼンターのサバンナ高橋が「もうひとつ説がございます」と切り出した。それが「『この番組は○月○日に収録したものです』のテロップを冒頭に出して浜田をひたすらカットしてOAしたら何かあったと思う説」。まんまと番組にしてやられたのだ。

 誰かが問題を起こせば、それをいなかったことにすればいいという風潮への痛烈な皮肉にも見えるし、ただの悪ふざけにも見える。いずれにせよ、その鮮やかな手口に感嘆してしまう。それ以上に、何もなくて本当に良かったぁとホッと胸をなでおろした。

INFORMATION

『水曜日のダウンタウン』
TBS系 水 22:00~
https://www.tbs.co.jp/suiyobinodowntown/