現代思想の若きスター、マルクス・ガブリエル。「ポスト・トゥルース」の時代に、「あらゆる物事を包摂するような単一の現実は存在しない」「私たちは現実をそのまま知ることができる」というテーゼを組み合わせた「新しい実在論」に基づき、刺激的な言論活動を展開中だ。日本の読者向けに、その思考のエッセンスを具体的な社会問題と結びつけつつ語り下ろした本書はPHP新書「世界の知性」シリーズの第一弾。
「著者がなぜこんなに注目されるのか。私なりの解釈では、ポストモダンの、全てが相対化した世界の中で、普遍的な道徳的価値観が『ある』とはっきり打ち出したところが新しいのかなと思います。『新しい』というよりも、『(過去に)回帰している』と言う方が的確かもしれませんが」(担当編集者の大岩央さん)
例えばガブリエルは、痛みに対する人間の行動は世界共通であると述べる。「サムライ」のように痛みを感じないふりをする人もいるが、それはあとから学んだ「文化」によって、生物学的な基盤から来る普遍的な行動が覆い隠されているのだと。つまり「新しい実在論」の論理自体は難解なのだが、肯定するものは直観的でシンプル。「真実」を求める人々を力づけるのだ。
「哲学や思想に興味がある学生の方から、ビジネス書の読者まで、幅広く手にとられています」(大岩さん)
2020年2月発売。初版2万2000部。現在3刷6万7000部