新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、4月16日、政府は緊急事態宣言の対象区域を全国に広げた。感染状況の違いなどから「全国一律」の宣言に戸惑いの声もあがったが、この非常事態だからこそ、都道府県知事の発言や対応に注目が集まり、これまでになく一人ひとりのキャラクターやリーダーとしての資質が明らかになる機会も増えた。
4月上旬まで感染者ゼロが続き、その間も病床数の大幅な引き上げや、医療現場と切り離したPCR検査の導入、無観客公演・配信への助成などを決め、独自の新型コロナ対策を続けてきた鳥取県の平井伸治知事に話を聞いた。
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なぜ病床数を12→322へ増やせたか
――鳥取県では、新型コロナウイルスの感染者がゼロのうちから様々な対策を講じ、県内初の感染が分かってからも、平井知事の記者会見での説明が「わかりやすい」とSNSでも話題になっていました。
平井伸治知事(以下、平井) 新型コロナウイルスが中国で注目を集め始めた頃から、大きな影響がいずれ来るかもしれない、先手を打つことができればと考えてきました。実は私たちにとって、2009年に流行した新型インフルエンザ対策が記憶に新しいんですね。当時、鳥取県内にも感染が広がりました。「これは始まると早いだろう」とにらんで、1月21日から新型コロナウイルス対策の組織を鳥取県庁に立ち上げました。新型インフルエンザの時、我々が取り組んだ感染症対策をベースにして考えていこうと。
県内には高齢者の方が多く、基礎疾患を持つ方もいらっしゃる。そうした方々を抱えながら、病院の数は決して潤沢ではないんです。必要数はあると思うのですが、絶対数がやはり大都市よりは少ない。「よほど準備をしてかからないといけない」という危機感が当初からありました。
――新型コロナに感染した患者さんを受け入れることができる病床(感染症指定病床)数を12から322(4月21日現在)まで引き上げることができたのは、なぜですか。
平井 日を追って感染が拡大していくなか、2月20日に鳥取県医師会をはじめ医療関係者らとの対策会議に私も乗り込みまして。「これから医療体制をしっかり作らなければならない。医師会も協力していただきたい」「新型インフルエンザの時のように、院内感染対策をしっかりやりましょう」という2点のポイントをお伝えしました。
正直、最初から上手くかみ合ったかは分かりません。「うちの病院に新型コロナの人をもってこないようにしてほしい」という率直な意見もあったようです。しかし、海外・日本の事例を見ても、無症状の感染者の方が多くいます。私から、「ここは病院側が万全の態勢をとって院内感染を防いでいくべきではないか」と申し上げました。