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4月まで感染者ゼロ 鳥取県・平井知事が語る「疑わしきはPCR検査」の理由

平井伸治知事インタビュー

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戦略は「疑わしきはPCR検査を」

――東京や大阪などとは感染状況の様子が違っていると思いますが、平井知事が構想されてきた鳥取県ならではの新型コロナ対策について、教えてください。

平井 鳥取県は独特の戦略で新型コロナに向かっています。まだ感染数は少ないです。ずっとゼロで続けてきました。これは、県民の皆さんにご協力いただいて、予防を一生懸命やってきたことの現れだと思っています。ウイルスは人との接触で感染が広がると考えますと、初動でどういう感染者の方がいるか突き止める、つまり早めに見つけて押さえる。これが鳥取県の考え方です。感染者がゼロの頃からどんどん病床数を増やしていきました。陽性患者の方3人に対して322ベッドです。まだ余裕はあります。

 時に専門家の方がおっしゃっていて、私たちとはちょっと事情が違うなと思うのが、「PCR検査で陽性が増えると医療崩壊を起こす」という意見です。鳥取県は「疑わしきはPCR検査をしたらいい」という態勢で臨んでいます。お医者さんが「これはちょっと怪しいね」と、検査が必要だと考えた場合は、全て検査対象にしましょうと。PCR検査の検体数はどんどん増えてきています。ローラーでPCR検査をしても、海外や県外に行っている方の場合は必ずしも感染ルートが特定できるわけではありませんが、いかにそこから先に広げないか。鳥取県は穴熊囲いの戦法ですね。しっかり守りを固めて、来るものはみんなで迎え撃とうと。

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4月17日、ドライブスルー方式のPCR検査の流れを県の職員が再現、報道陣に公開した(ANNnewsCHより)

――PCR検査のドライブスルー方式と徒歩でも検査を受けられるウォークイン方式の導入については4月9日の会見で話されて、4月11日からという形で進んでいましたよね。

平井 病院の駐車場など、屋外に検体採取場を設けて、現場の負担軽減につなげることと、院内感染を防ぐこと。これが大きな目的です。この方式では、連続して検体を採取できるので1回ごとに防護服を着脱する手間も減ります。

 鳥取県では、新型インフルエンザ流行時の反省をふまえて、PCR検査を行う機械の台数を増やしていたんです。衛生環境研究所にもともとあった120検体に家畜保健衛生所から移転させた機械を合わせて180検体、さらに鳥取大学には県の補助で新たに機械を入れて16検体、合計で196検体を1日にさばけるというペースになっています。これは全国的にみても、人口規模からしますと突出して多いと思います。

コロナ対策で「政治の話をしてはいけない」

――新型コロナに関連して、安倍首相をはじめとする政府や、都道府県知事の記者会見の様子が連日報道されています。会見の場で、平井知事がわかりやすく伝えるために何か気をつけていることはありますか?

平井 新型コロナウイルス対策は、政治の話をしてはいけないんですよね。命と健康を守るために何をやるべきか、率直に、迅速に行動しないと解決しない。全国的にみると、どうも政治の世界に引き込まれすぎているのかな、と個人的には懸念しています。何かのパフォーマンスであってはいけない。

――東京五輪の延期を巡る動向や、政府の布マスク2枚配布、給付金の方針転換などに不信感を持っている人も多いと思います。

平井 本当に大切なのは、一体この事態をどうやって解決するか。今は国だとか県だとか、関係なく協力していくべき時ですよね。そして最もあってはならないのは、患者さんや医療機関に厳しい目が注がれるようなこと。少し政治とは距離を置きながら、現場をみんなで盛り立てて、協力しあう。そういうことがあっていいんじゃないかなと思います。

――知事として、言いにくいことを伝えなければならない局面もありますよね。例えば、鳥取県の1人目の感染者の方について、3月下旬に鳥取市が招いた外国人の砂像作家と一緒に飲食店を訪れていたことをあえて公表したのはなぜですか。

平井 この時は、記者会見で率直に特徴的な事実関係を申し上げました。鳥取市からは「市内の飲食店に行ったことだけを公表するべき」という申し入れもあったんですけれども、それでは飲食店への風評被害を生みかねないですし、外国人の方との接触については言わざるを得ないと考えました。事実を示しながら徹底調査することが大切だと。

※写真はイメージです ©iStock.com

 それからこれもちょっと物議を醸しましたけれども、都市部から地方への「コロナ疎開」は間違っていると私が申し上げたことがありました。「コロナが薄いから」という理由による転居や観光というのは間違った考え方だと。緊急事態宣言が出ていた地域の方々には外出自粛の要請がありまして、これは他県に行けばいいということでは決してなく、自粛の趣旨というのは「家におろうや」ということですよね。