4月12日に放送されたウイルス学者の河岡義裕さんを取材した『情熱大陸』が、SNS等で大きな反響を呼んだ。新型コロナウイルスと最前線で闘う河岡さんの日々に密着した番組は、感染拡大について視聴者に注意喚起を促すという意義に加え、ウイルス研究の第一人者である河岡さんが直面する葛藤を描いたことで、人物ドキュメントとしても非常に見ごたえのある内容だった。
私自身、これまでに何本も制作に携わったスタッフのひとりだが、久しぶりに『情熱大陸』の底力をみた、と思った。普段はその道の成功者や話題性のある著名人を取り上げる印象が強い同番組だが、時にジャーナリスティックな企画で「いまこそ伝えたい人」を放送し、骨太な一面を見せる。このタイミングに企画し、制作したスタッフのみなさんに敬意を表したい。
視聴者から大きな、熱い反響をもらった「神回」
さて、テレビ番組はその時々の社会の状況に否応なく影響を受けるし、ドキュメンタリーは特にそのことに敏感であるべきだ、と私は考えている。『情熱大陸』でいえば、2011年に起きた東日本大震災に関連した企画が何本もラインナップされ、ニュースやワイドショーが伝える情報とは違う角度で、様々な立場で震災に向き合う人々を描いてきた。その中から、「わたしの『神回』」を紹介したい。それは、2012年4月8日と2016年3月13日に2度にわたって放送された「ロックバンド・プリンセス プリンセス」の回だ。
最初に断っておきたいのは、この回には私が制作会社のプロデューサーとして携わったという点だ。取材したディレクターではないので、自分が中心になって作ったわけではないが、スタッフのひとりではあったので、自画自賛のそしりを免れないかもしれない。それでも書いておきたいほど、視聴者から大きな、熱い反響をもらった番組だったので、どうかご容赦願いたい。
プリンセス プリンセス(以下プリプリ)は、1980年代の後半から90年代初頭にかけてミリオンセラーを連発し、コンサートの観客動員数は延べ180万人以上を記録した伝説のガールズバンドだ。1996年に惜しまれながら解散した彼女たちが、東日本大震災の復興支援のために1年限りの再結成をする、というのが企画の発端だった。
番組は、彼女たちがなぜ再結成を決めたのか、という問いから始まる。