毎日のように新型コロナウイルス関連のニュースを目にする。世の中が、世界中が、今や日常とはかけ離れた異常事態になっているので仕方のないことではある。しかしそんな状況下にあっても、普通の死、新型コロナウイルスとは関係のない死というのは当たり前だが訪れる。
東京在住のOL・Mさんは、3月半ばに父親を亡くした。80歳での孤独死だった。
父は廊下で吐血したまま、倒れていた
Mさんの父は都内にある築50年の5階建てマンションに一人で暮らしていた。10年前に妻(Mさんにとっての母)に先立たれ、それからはMさんとMさんのお兄さんが週に2回、交代で面倒を見に行っていた。
Mさんは死の前日に、父と会っていた。衣類をハンガーに掛けるのを面倒臭がった父に対して「自分で掛けなさい」と言ったのが、親子の最後の会話となった。翌朝、安否確認も含めて毎朝父に朝食を届けてくれていた弁当屋から電話が入る。
「インターホンを何回鳴らしても反応がありません」
Mさんはすぐに行くことができず、兄が先に父の元へ駆けつけた。父は玄関すぐの廊下で吐血したまま、うつ伏せで倒れていた。兄はすぐに警察と救急車を呼んだが、父はすでに死亡していた。
「コロナが原因なら大変なことになりますね」
Mさんが駆けつけた時には、検視を行う監察医の到着を待っている状況だった。その間父の遺体を動かすこともできず、傍らで警察官と兄が「コロナが原因なら大変なことになりますね」と話し合っていた。
Mさんは嫌な予感がしていた。そういえばこの1~2週間、父は発熱していたのだ。