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「37度5分が落ちない」。かかりつけの内科の先生にそう訴えて、父は解熱剤をもらって毎日飲んでいた。
この時期、メディアでは「新型コロナウイルス感染症の主な症状は『発熱』と『咳』が1週間以上続くこと」と報道されていた。
特に父がひどく咳き込む様子もなかったし、熱も微熱だったのであまり疑いもしていなかったが、いざ吐血して亡くなった姿を前にすると不安は増幅されていった。
検死の結果、判明した死因は……
やがて監察医が到着し、検視を行った。その結果、死因は「虚血性心不全」と診断された。
父は新型コロナウイルスに感染していなかった。吐血はしているものの肺炎の疑いはなく、元々心臓に疾患が認められた。弁膜症や不整脈も患っていることから、心臓に限界が来ていたのだ。要するに寿命が尽きたのである。
日本人の死亡原因として最も多いのが「がん」。そして2番目に多いのが「心疾患」。この心疾患の中でも突然死の大半を占めるのが「虚血性心不全」である。
血が流れなくなり、心臓の働きが弱まった
虚血性心不全とは、心臓に酸素や栄養を送る血管が動脈硬化によって細くなってしまい、心臓に運ばれる酸素や栄養が足りない状態になる「狭心症」や、血管が完全に詰まって血流が途絶えた状態になる「心筋梗塞」などを含む、突発性の心疾患のこと。
「虚血」とは血が流れなくなることを指すので、これらが原因で心臓の働きが弱まることを総称して「虚血性心不全」と呼ぶ。