1ページ目から読む
4/5ページ目

「女性だから健康や人命を一番に考えている」?

 しかし、ポストフェミニズムやネオリベラル・フェミニズムは、本来のフェミニズムとは違う。フェミニズムとは、あくまで「女性全体の解放」や「自由」を願うものだ。ポストフェミニズムやネオリベラル・フェミニズムは、そうではなく、「能力ある女性」が男性と伍して競争し、資源を獲得していくことに目標を見出している。最終的なゴールは「能力ある自分」の「権力獲得」なのであり、女性差別の解消ではないのである。

 小池も例外ではなく、「女性だから健康や人命を一番に考えている」という世間のイメージを利用していながらも、実際には強烈な上昇志向に突き動かされているように見える。政治家が上昇志向を持つのは仕方ない面もあるが、問題はそれに見合う内実があるかということだ。

 都知事就任後すぐに直面した築地市場の移転問題でも、市場の人々を騙すような発言を行っているし、民進党と合流した「希望の党」結成でもリベラル派を「排除」するとして混乱させた挙句、その党も無責任に放り出している。結果的に得をしたのは自民党であり、リベラル派は壊滅的な打撃を受けた。

ADVERTISEMENT

小池百合子都知事と旧・民進党の面々 ©︎getty

 都知事選では、多くの女性有権者の関心ごとである保育園不足に対して保育士の待遇改善を否定し、保育園の設置基準を緩和することを公約していたが、保育の環境が悪化するだけだと批判されている。

 そもそも、今回のコロナ対策にしても、3月20日からの連休明けに急に立ち上がったが、それまで座して等閑視していたのは国と同じだ。厚労省の予測報告を受けても対策を打たなかったことが報じられている。オリンピック延期を引き出すまで、感染拡大を放置していたのである。対策を本格化させるのが1ヶ月でも早かったら、現状は全く違った、ベターなものになっていただろう。対策の不備を安倍首相だけが批判される形になっているが、実は小池も共犯関係だと言わざるをえない。

 約20年前多くの人々が小泉に変化を期待したけれども、現実に残されたのは郵便局の人々の労働環境の悪化と通信運送業界の疲弊、古い自民党政治だった。小池も小泉の手法にならっている。小池は、彼女に期待を寄せる人々の願いと幻想だけは掠め取っていくだろう。