ホットケーキミックスを使えばあとはバナナ・卵だけあればOK
お店で売っていないから、自分で焼かないと食べられない。逆にいえば、あまりにも手近な材料で、誰でも失敗せずに作れることこそが、バナナケーキの強みだ。ということで、ネット上ではバナナケーキのレシピがたくさん見つかるが、もともと王道から外れたお菓子だから、これぞと決まった定型や基本がない。
そのなかで、多数のレシピに共通するのが、ホットケーキミックスを使うこと。あらかじめ小麦粉と砂糖、ベーキングパウダー、香料が配合してあるので、あとはバナナと卵だけあれば、立派なバナナケーキが完成する。ここにバターかサラダ油、砂糖を足せば、もっとリッチな味になる。バナナは手かフォークでつぶせるし、混ぜ合わせるのに繊細さは不要。ミキシングはビニール袋で事足り、特別な器具はいらない。オーブンを使わず、フライパンや炊飯器で焼くのも当たり前だ。
これだけ超簡単なお菓子だから、正直いって、パティシエが作るように素晴らしくおいしくはない。バナナを入れすぎると、ねっちりもっちり、羊羹のような食感になることもある。バナナの水分量があるぶん、生焼けも起こりやすい。だが、それもご愛敬。完璧でなくても、自分で手作りしたという体験が素晴らしいのである。手作り菓子は、店と違った味なのが、おいしいのである。
お菓子のホームメイドは定着するか
70年代のホームメイドブームは、チーズケーキが火付け役だった。材料を混ぜるだけのレアチーズケーキでホームメイドの楽しさに目覚めた人はみな、クッキー、マドレーヌ、パウンドケーキ、ショートケーキ、シュークリーム……と、少しずつレベルアップしていった。
お菓子作りには、料理とはまた違う、工作や手芸に似た喜びがある。食べれば、心を癒やす効果も得られる。コロナがいったんおさまったとしても、ワクチンが開発されず第2波、第3波のおそれがある以上、外食マインドは薄らいだままで、内食・中食へのシフトは続くだろう。だが、お菓子のホームメイドが定着するか否かは、日常生活に余剰時間を持てる働き方ができるかにかかっている。それ以前に、経済が冷えきってしまっていたら、それこそ菓子作りどころではなくなっているはずだ。
ストレスフルなときに、甘いものがないのは、甘党ならずとも悲劇。濃厚接触には、一緒に食事をすることも含まれる。人との食事を自粛しなければならないなら、なおさらお菓子を作ったり食べたりする幸せだけは、手に届くところにあってほしい。