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わたしの「神回」

2020/05/04

その3)街のジオラマが崩れて見せる“震災の日”『あまちゃん』第133回

 伏線回収が巧いといえば、宮藤官九郎。『あまちゃん』(13年)は“朝ドラ”に伏線回収の喜びをくれた。挙げればキリがないので、ひとつを選ぶとしたら……。とその前に念のため、『あまちゃん』の概要を記しておこう。岩手の架空の街・北三陸市に母(小泉今日子)とやってきた高校生のアキ(能年玲奈 現・のん)が海女になったりアイドルになったりたくさんの体験をしていく。一時は東京に戻ってアイドル活動をしていたアキは、2011年3月11日、東日本大震災が起こった後、北三陸に戻り、街の復興に力を尽くす。

『あまちゃん』ヒロイン・のん ©文藝春秋

 震災の起こった、第133回は『あまちゃん』の中でも重要な回だった。視聴者のショックを配慮してか震災の生々しい描写はなかったが、街が崩れていく様子を役所に飾ってあるジオラマで見せた。このジオラマは、初期からずっと登場していたもので、まさかこれがここでこういうふうに使われるとは……と『あまちゃん』をずっと視て来た者たちは目を見張ったものである。

奇跡すぎるサプライズは鳥肌もの! 「紅白歌合戦」のあまちゃん特別編(第157回)

『あまちゃん』の神回をもうひとつ挙げさせてほしい。

 放送された年の「紅白歌合戦」内の特別編である。NHKホールの外からホールの舞台と連携してのミニドラマは第157回(最終回の次に当たる)とされていた。

紅白でのサプライズ演出も話題に(左から小泉今日子、橋本愛、薬師丸ひろ子) ©文藝春秋/時事通信社

 アキの親友・ユイ(橋本愛)は東京に出て活躍する夢をもっていたが間が悪く、最後の最後まで東京に出ることができなかった。それがついに東京に来てアキとふたりで「潮騒のメモリー」を歌うというサプライズ。2番は小泉今日子、もう一度、2番を鈴鹿ひろ美役の薬師丸ひろ子とバトンをつなぐ流れは鳥肌もので、何度視ても胸が熱くなる。この特別編もちゃんとNHKオンデマンドにあるので、ぜひ視てほしい。

 いま、閉じこもって鬱々としている時期、北三陸から飛び出すユイちゃんの晴れ舞台はいっそう涙を誘う(私は見返して涙が止まらなかった)。復興の想いと、映像や演劇(エンターテインメント)を知り尽くした作り手や手練の俳優たちの、朝ドラを楽しもうという気持ちと、フレッシュな俳優たちの懸命さと、レジェンドアイドルとが見事に融合して奇跡が生まれた。もうこれを超える朝ドラ神回ははないだろうと断言できる。

 これ以上ない神回を紹介してしまったので、ここで終わろうと思うが、『あまちゃん』はほかにも詳しい方がいらっしゃるので、ほかの朝ドラも紹介しておきたい。