「監禁・傷害」容疑と「監禁致傷罪」の違い
A「約20日間の捜査でこのような事実が認められた。逮捕罪名で監禁と傷害か、監禁致傷か判断した結果こうなった」
Q「監禁の結果として傷害が生じたのか、監禁の手段として暴行を加えたのか?」
A「監禁致傷というのはまず、監禁そのものによってケガが起こった場合に成立します。たとえば今回とは違うが、ぐるぐる巻きにして身動きできない状態にし、そのこと自体でケガが起こった場合。また新潟の監禁事件(2000年1月に新潟県で発覚した、少女が9年2カ月にわたって監禁されていた事件)では、長期間の監禁で「骨粗しょう症」になったことを傷害とみなしています。もう一つは、監禁の手段である暴行や脅迫によって、ケガが発生した場合も監禁致傷罪になる。こういう2種類のパターンがあります」
Q「今回は2番目の方に近い?」
A「そうです。起訴状からいえば、脅迫的にものを言っている。反省文を書かせている。暴行ということでいえば、足の爪を剥がさせている。首を絞めてもいる。監禁の手段による暴行によって傷害が発生したと認定できる。これが監禁致傷にあたるということです」
Q「監禁するために暴行したということですか?」
A「監禁状態を維持するために、監禁の目的として傷害をしたということです」
Q「勾留時からこの罪名だったのですか?」
A「勾留罪名がどうのこうのというより、結局約20日間の捜査の結果、最終的な判断で、証拠上どういう状況が認定できたかということです」
結果として下限が上がるものの「あくまでも法律で何罪になるか」
Q「監禁致傷とするのと監禁と傷害では、監禁致傷の方が重いという判断ですか?」
A「監禁致傷の法定刑は3月以上10年以下(当時)だが、こちらの方が重いから選んだというわけではありません。あくまでも法律でいうと何罪になるかということですが、それとは別に刑期のことだけでいうと、監禁致傷は罰金がない。傷害も監禁致傷も懲役の上限は10年(当時)ですが、監禁罪が3月以上(5年以下=当時)、罰金刑なし。法定刑の下限は、監禁罪の下限の3月ということになる。傷害と監禁致傷の上限は10年で同じですが、一般論でいえば監禁致傷の方が重い評価を受けるということです」
Q「結果として下限が上がるということですか?」
A「条文上はそうです」
Q「『今度逃げたら』とか『逃走したら』とか、そういう言葉があって危害を加えたからこそ、監禁の手段たる傷害といえるわけですか?」
A「証拠を総合評価して、監禁の手段としての暴行脅迫であるということです」