「男女ともまだ黙秘。男は世間話には少し応じているが、肝心な部分はまったくダメ。女は完黙」

 福岡県警の捜査一課幹部が、取材する県警担当記者にそう話したのは2002年3月14日のこと。福岡県北九州市で松永太(逮捕時40)と緒方純子(逮捕時40)が、17歳の少女・広田清美さん(仮名)への監禁・傷害容疑で逮捕されて1週間目にあたる。

 その後も彼らの黙秘は続く。

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※写真はイメージです ©iStock.com

松永はのらりくらりと容疑を否認、緒方は完黙

 私自身が複数の(県警担当やその他の)記者から得た情報によれば、捜査幹部や捜査員が口にした、松永と緒方の取り調べ状況(一部雑感も含む)は、順に並べると以下の通りだ。なお、日にちが重複するものに関しては、同日に別の捜査関係者から得た証言である。

「2容疑者の近況はまったく変わらない。松永は雑談にはよく喋っている。毎夕の見房(留置場内での房の見回り)では、グーグー眠っていたり、『ごくろうさまです』なんて言ったりも。余裕があるようには見える。ただ者ではない。緒方はまったく調べには応じない完黙」(3月16日)

「松永、緒方の供述に変化はない。松永は詐欺師だから、世間話に応じながらのらりくらりと容疑を否認している。緒方は一貫して完黙。だが、先に落ちるなら緒方の方だろう。必死で黙秘しており、一度話し始めたら、一気にいけると思う」(3月16日)

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「松永は依然として変わりません。完黙。よく食事をしている。ここのメシはうまいから。もう背広ではなくトレーナー姿だった。弁護士から差し入れられた法律専門書を熟読している。そのうち弁護士はいらんと言ったりするかもね」(3月17日)

「松永、緒方とも自供はなし。緒方はまだ雑談にも応じていない」(3月17日)

「第一の矢、第二の矢……と撃って最後は殺人に」

「(名前が判明しているため)いまさらもう、『あなたの名前は松永ですか?』とはいちいち尋ねたりしない。いわば暗黙の了解みたいなもので、被疑事実について質問し、それに受け答えしている状況。まける(作成できる)調書はまいている。とはいえ、容疑についてはまだ完黙の範囲。向こうも自分の名前で弁護人選任権を書いているわけだし、こっちはこっちでその名前を特定したうえで質問しているということ。