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最長20日間の拘留期限が迫る

 こうしたなか、メディアの関心は“満期”と称される勾留期限の満了日までの、捜査機関の方針に向けられていた。松永と緒方の勾留が請求されたのは3月9日。勾留期限は最長で20日間であるため、その時期が迫っていたのである。

 彼らが起訴されることは確実視されていたが、その際の罪名については明らかになっていない。これまで一部で不安視されていた監禁罪(逮捕・監禁罪)での起訴があるか否かということに始まり、もし監禁罪があるならば、監禁罪と傷害罪なのか、それとも監禁致傷罪(逮捕・監禁致死傷罪)かという情報を得る必要があった。

 さらにこの時点では、起訴前に別の容疑での再逮捕の可能性もある。もしそうなった場合はどの容疑かということについても当たりをつけるべく、記者たちは日夜捜査関係者のもとに押しかけていた。

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 ちなみに、被害者である清美さんの父・由紀夫さん(仮名)について、殺害されている可能性が高いことに言及する報道はすでに出ていたが、この時点では“本件”ともいえる殺人容疑での再逮捕の可能性は、「今回はない」と見られていた。それは松永と緒方が前述の通り黙秘を貫いているうえに、有力な物証が揃っていなかったからだ。

几帳面な緒方は物証を残しておらず

 ある捜査員は県警担当記者に対して、次のように話している。

「(3月8日と15日の関係先4カ所への家宅捜索による)押収品数千点は、××(地名=北九州市小倉北区)の官舎の2部屋を借り切って仕分けしている。数メートルの長さで切断された電気コードが何本も出てきてはいるが、他はほとんどガラクタだ」

 通常、有力な物証があれば科捜研(科学捜査研究所)に持ち込んで鑑定を行うのだが、別の捜査員は言う。

「めぼしいものは出てきていない。科捜研に上げている資料数は2桁もいってない。緒方は窓に目張りしているカーテンの画びょうをきっちり等間隔で打つなど、非常に几帳面な性格。片野の部屋はちり一つないような状態で、物証はあまり期待できない」

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 この「片野の部屋」とは、由紀夫さんが殺害されたとされる『片野マンション』(仮名)30×号室のこと。同部屋からの押収物にはノコギリが含まれているが、前出の捜査員によれば「新品同様で、骨を切れば刃こぼれなどが起きるものだが、まったくその様相はない」とのことだった。ほかにも、1年以上北九州市内の賃貸駐車場に放置されていた緒方の父親の車を含む、計3台の車両が押収されていたが、車内からは血液の存在を示すルミノール反応は出ていない。