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カープと開幕と私――今季最初の試合をどう観るか

文春野球コラム Cリーグ2020

2020/05/13

五感をフル活用して楽しむ開幕戦

 開門時間から入ると、選手たちの練習風景が最高のおつまみに。試合前、のどかな時間の中で響く打球音。選手同士の挨拶。時には選手たちの笑い声、ノックで捕球できなかった時の「あ〜!」といった叫び声、それをからかう声まで聞こえてきます(カープだと上本崇司あたりがオススメアイテムとなります)。そうこうしてる内に、今度は心地よい風が吹く。目で楽しみ、耳で楽しむだけではなく、肌でも球場にいることを感じる。これはまさに球場ならではの感覚。最高の時間帯です。

 そんな時間を楽しんだあとは「勝負メシ」。開門から1時間後くらいにお腹が減るようコンディショニングをし、旧市民球場時代からの名物である「カープうどん」を食す。先ほども書きましたが開幕戦は元旦。自分はその開幕戦で食べるカープうどんのことを「おせち料理」だと思っています。皆さんも、球場でいつも頼むフードや勝負メシ、きっとありますよね?

 開門から1時間、2時間、長い時には3時間。その時間をしっかり楽しんだら、いよいよプレイボール。バックスクリーンにはシーズンを通して使われるスタメン発表の映像、多くの著名人が出演する「それ行けカープ」が初披露されます。それを開幕戦で、すべてのカープファンと一緒に見るのも大きな楽しみ。そして、ここまできたらあとはもう応援あるのみ。新しい応援歌があれば周りと合わせながら歌い、守備も攻撃も楽しむ。点が入ればみんなとハイタッチをして万歳三唱。5回になったらCCダンス、7回になったらジェット風船。いやはや、これまで数えきれないほど味わってきたのに、球場観戦というやつは一体どこまで楽しいのでしょうか。

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 なお、先に書いた「振り向いて球場を見る」ことが視覚とするならば、練習中の打球音や選手の声は聴覚。肌で風を感じるのは触覚。カープうどんは味覚。試合開始前に五感の内の4つを味わっていることになります。となると残すは「嗅覚」。野球におけるそれは、一体なにか。ズバリ、試合展開を「読む」ことではないでしょうか。

 ああ、これは打たれる。よし、ここは点が入る。ただ、この嗅覚というのがなかなか厄介で、自信の有無にかかわらず間違えることが多々あります。昨シーズンの開幕戦すなわち巨人戦。初の開幕投手となった大瀬良がFAした丸から圧巻の4奪三振、巨人打線を完全に抑えてカープが5ー0の完封勝利。完璧でした。試合が終わった瞬間、私は「強い。今年も完全に優勝。間違いない」と断言。私の嗅覚は完全に「4連覇」の匂いを感じ取っていたのです。しかし、その後の展開は皆さんもご存知のとおり。なんとも悔しいシーズンになりました。

 という具合に往往にして匂い間違いを起こすことのある嗅覚ですが、今後も私は頼りない嗅覚を含む五感をフル活用して開幕戦、もっと言えば野球を楽しみたいですし、これまで以上に「開幕」に感謝することになると思います。正直、ここまで野球と離れることになるなんて考えてなかったし、待ち遠しいというレベルもとっくに超えてしまいました。もういくつ寝るとお正月、早く来い来い観戦解禁。あの球場の雰囲気、高いけど美味しいビール、知ってる人も知らない人も、性別も年齢も関係なく周囲の人と共有する喜びや悔しさ。新型の2文字から始まる邪魔者を一刻も早く戦力外にし、一刻も早く楽しみたいです。五感がうずまくあの場所で。

©ガル憎

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