荒岩の名言「ハッピーバースデー 1日過ぎたけどな」
そして3つ目は、第55話「COOK.55 妻にささげるチーズケーキ」(第6巻に収録)。
いい店を見つけたから今晩どうかと取引先に誘われるも、「今夜はどうしてもはずせない用があります!!」と力強く断る荒岩。外せない用事とは、誕生日を迎えた虹子のバースデーパーティーであった。まことと一緒に部屋を飾り付けて妻の大好物である“荒岩流本格派チーズケーキ”をはじめとする料理に取り掛かるも、一方の虹子は親しくしていた人間国宝の陶芸作家・金山庄衛門先生の訃報を聞いて明日の朝刊に載せる追悼記事を書くことに。
何度も先生を訪ねるも門前払いをくらったこと、やっと認めてもらって取材を重ねたことを思い出し、涙を流しながら原稿を書く虹子。2時30分に帰ってきた彼女に、寝ずに待っていた荒岩は「ハッピーバースデー 1日過ぎたけどな」と満面の笑みを浮かべる。翌朝、追悼記事を読んで「うむ。いい文だっ」と感想を語る荒岩、そんな“誕生プレゼント”を受け取って夫に抱きつく虹子、なんだか感銘を受けた13歳か14歳の俺。
男女の“らしさ”にとらわれない夫婦のあり方が描かれた3つの神回にヤラれた俺なわけだが、これらに影響を受けたのか、持って生まれた性格なのかはわからないが、(子供が生まれる前の話だが)妻が酔って明け方に帰ってこようとも、俺と子供の前でZoom飲みをしようともまったく気にならないし、洗濯や掃除をしていてもまったく苦にならない。
まぁ、いまはどこの夫婦もこんなものだろうが……。とはいえ、仕事ばかりで家のことは無関心だった父親、そんな夫への不満をこぼしていた専業主婦の母親に囲まれて育った俺が、かろうじて父親のようにならなかったのも、やっぱり「クッキングパパ」がなにかしらの影響を俺に与えていたからなのだろう。