「クッキングパパ」が5月10日まで100話無料公開中だ。主人公の荒岩一味から、料理ではなく、夫や父のあり方、男らしさについてあらためて考えさせられたというライターの平田裕介さんが、外出自粛中の今だからこそ読みたい初期の3話を紹介する。
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「クッキングパパ」単行本は153巻に
いつのまにやら単行本が153巻に到達、いつのまにやら「モーニング」での連載が35周年を迎えていた、うえやまとち先生の「クッキングパパ」。
タイトルからしてジャンルはグルメ漫画だが、個人的にはそれだけで括れる作品だとは思っていない。
なぜなら、主人公の荒岩一味からは料理ではなく、“夫や父のあり方”“男らしさ”についていろいろと学ばされ、考えさせられてきたからだ。
身長180cm、体重80kgの巨漢。しゃくれにしゃくれた巨大な顎、ぶっとい眉毛に三白眼。
いかつくて威圧感たっぷりの風貌から、さぞや“有毒な男らしさ”を撒き散らしそうな野郎だと感じてしまうが、荒岩はそうしたものをまったく持ち合わせていない。
“イクメン”の言葉も発想もなかった時代から
総合商社・金丸産業の営業主任(現在は課長)として部下を従える身だが、ジリリーンと電話が鳴れば誰よりも先に受話器を取って対応し、17時きっかりに退社してまっすぐ帰宅。留守番していた息子・まことの好物を作って一緒に夕食、続けて風呂に入れて、上がったらガッツリ遊んでやる。
新聞記者の妻・虹子が帰ってくると、入れ替わるようにしてスクーターを飛ばして5分の場所にある会社に戻り、部下が終えることのできなかった仕事を片付ける。そして再び家に戻って寝る前に、明日の朝食の仕込みを済ます。しかも毎日、自分と妻の弁当も用意する。……といった具合に、第1話「COOK.1 イタリアン鍋料理は手軽でボリューム満点」で彼の人となりと一日のルーティンが紹介されている。
連載開始は1985年。“イクメン”なんて言葉があるわけもないし、それらしい発想もなかった。男が料理するといっても趣味の範疇で語られる程度。台所に立つ男なんて梅宮辰夫か金子信雄くらいしか知らなかった当時12歳の俺にとって荒岩は衝撃そのものであったが、いずれはこうならなくてはという指標になった。そう俺に思わせた、3つの神回を初期からピックアップしていきたい。