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「スカーレット」脚本家・水橋文美江が明かす、八郎「僕にとって喜美子は女や」発言の“本当の意味”

脚本家・水橋文美江さんインタビュー#2

2020/03/28
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 ついに最終回を迎えたNHK連続テレビ小説「スカーレット」は、主人公の川原喜美子(戸田恵梨香)が陶芸家になるまでの道のりを描くと同時に、同じく陶芸家の夫・八郎(松下洸平)との「同業者夫婦」の物語でもあった。2人のすれ違い、衝撃的だった八郎の「僕にとって喜美子は女や」発言をとことん描いた理由について、脚本家の水橋文美江さんに伺った。(全3回の2回目。#1#3へ)

水橋文美江さん

同業者の夫婦がうまくいかなくなる様を描く

――「穴窯」(*1)をめぐって起きる喜美子と八郎の同業者同士の衝突とすれ違いに、それまで2人の絆を見守ってきたファンは騒然としました。

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水橋 ヒロインが戸田恵梨香さんに正式決定する前から、プロデューサーの内田ゆきさんと話していたのは、同業者の夫婦がうまくいかなくなる様を描くのは面白いのでは? ということです。結婚して夫婦揃って陶芸家になるけど、妻の才能が秀でていることで夫とのすれ違いが生まれる……。もともと、そういったところを描きましょう、描きたいねと言ってたんです。

*1 喜美子は望む焼き色を出すため、「穴窯」方式の作陶に取り組むが、薪代をまかなうために借金までしている。窯焚きの失敗は6回に及ぶが、このまま失敗が続けばこれまでの投資が水泡に帰すばかりか、窯が崩れ落ちて家に火が燃え移り、火事になってしまうかもしれない。諦めずに試行錯誤を重ねて、次は2週間も1150度の窯焚きを行おうとする喜美子に対し、堪忍袋の緒が切れたとばかりに、八郎の次のセリフへとつながる。

戸田恵梨香さん ©時事通信社

八郎には絶対に言わせなかった言葉

――八郎が放つ「前に言うたな。同じ陶芸家やのになんで気持ちわかれへんのって。僕にとって喜美子は女や。陶芸家やない。ずっと男と女やった。これまでも、これからも。危ないことせんといてほしい」というセリフはたいへんショックでした(104話、2月4日放送)。

水橋 意図的に、八郎には絶対に言わせなかった言葉があって。「嫉妬」という言葉だけは使わなかったんです。「嫉妬」という言葉を使うと、それだけが独り歩きすると思ったんです。「喜美子の才能に嫉妬している」ということを、いかに表現を変えて伝えるか。八郎が、かわはら工房に弟子入りした三津(黒島結菜)に、「喜美子に横におられんのは、しんどいなあ」と言うのも嫉妬なんです。そういう彼の発言はすべて嫉妬から来ている。男のプライドを八郎自身が別の言葉に変換して語っているように、私は書きました。八郎を演じた松下洸平さんも嫉妬の気持ちがあったんだろうということはわかってらしたと思います。

「スカーレット」最終週・第25週の台本。ご自宅のリビングで、お話を伺った。