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新たな希望「一本列島」

 月刊時刻表は鉄道のダイヤを反映するから、「時刻表の神回」は「ダイヤ改正の神回」とも言える。筆者の印象に強く残っているダイヤ改正は、1988(昭和63)年3月の全国ダイヤ改正だ。月刊時刻表としては1988年3月号である。国鉄が分割民営化されて初めての全国ダイヤ改正だ。もっとも大きな要素は青函トンネルと瀬戸大橋の開通だった。

青函トンネル開業と同時に誕生した「北斗星」は、豪華寝台特急のさきがけとなった ©iStock.com

 国鉄式に言えば、キャッチフレーズは昭和63年3月の「ロクサンサン」になるところだ。しかしこの時は「レールが結ぶ、一本列島。」だ。北海道、本州、四国、九州、日本列島の線路が1本につながった。以降「一本列島」として語り継がれていく。

 ロクサンサンにならなかった理由はもうひとつある。青函トンネルを通る津軽海峡線は3月13日に開業した。瀬戸大橋を通る本四備讃線の開業は4月10日と少し遅かった。そのため、JR四国のダイヤ改正は4月10日になった。ロクサンサンとロクサンヨンをまとめて一本列島にしたわけだ。月刊時刻表3月号は両方の改正を掲載したから、JR四国の路線には「このページは、4月10日(日)からの時刻です。」と注釈が付いていた。

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寝台特急「瀬戸」は東京~高松間に

 青函トンネル関連では、上野~札幌間の寝台特急「北斗星」が運行を開始した。個室が多く、食堂車でフルコースを提供するなど、後の豪華寝台特急に発展していく列車だ。大阪~青森間の寝台特急「日本海」は青函トンネルを通って函館まで延長された。東北新幹線は盛岡まで到達しており、盛岡~青森間の昼行特急「はつかり」が函館へ延長した。廃止された青函連絡船の代わりに、青森~函館間の快速列車「海峡」と青森~札幌間の夜行急行列車「はまなす」が誕生した。

鉄道道路併用橋としては世界最長の瀬戸大橋 ©iStock.com

 瀬戸大橋関連では、それまで宇高連絡船に接続していた列車たちが海を渡った。東京~宇野間の寝台特急「瀬戸」は東京~高松間に、高松~松山~宇和島間の特急「しおかぜ」と、高松~高知~中村間の特急「南風」は岡山発着となった。高松~徳島間の急行「阿波」は特急「うずしお」に格上げされ、岡山発着となった。さらに本州四国連絡列車として、岡山~高松間に快速「マリンライナー」が誕生した。

 私の先輩に当たる年代の鉄道ファン諸氏なら、全国に特急網が拡大される「ヨンサントオ」や、エル特急とブルートレインに象徴される「ゴーサントオ」を神回に挙げるかもしれない。しかし、私にとっては「一本列島」だ。JRグルーブになっても合理化は継続され、各地の地方路線は衰退、廃止されていく。鉄道の黄金時代が終焉を迎えつつある時代に、日本列島が鉄道でひとつになった。これは日本の鉄道にとって、新たな希望の光だった。