世界中を席巻している新型コロナウィルスは、将棋界にも多大な影響を及ぼした。幸いなことに本稿を書いている時点で棋士・関係者の感染は確認されていないが、名人戦・叡王戦・女流王位戦といったタイトル戦番勝負は延期され、加古川青流戦の中止も発表された。また指導対局や大盤解説など、棋士とファンが直接触れ合う機会もなくなってしまった。
4月7日に緊急事態宣言が発令されてからは、関東所属の棋士と関西所属の棋士がぶつかる対局も延期となっている。その結果、対局の数も相当に減ってしまった。4月7日から30日までに行われた対局は89局だが、昨年の同期間の数字をみると150なので、半減に近い。
もともと、将棋界の4~5月は順位戦が行われないため、他の時期と比較すると対局は少なくなるのだが、それがさらに半減するとどうか。ファンと接する機会がなくなってしまった現状では盤上でアピールするしかないのだが、それすらできなくなってしまっている。
未曽有の事態を迎えた現在、棋士はどのような生活を送っているか。数名の棋士に話を聞いてみた。
注目集める自宅からのオンライン対局
まず共通しているのが「外に出ることが極端に減った」こと。対局と普及活動が棋士の二大仕事だが、それがいずれもできないのでは致し方ない。そのような中、自宅内でもできることはなんだろうか。
「詰将棋の書籍を私は出す予定ですが、詰将棋を作る棋士も多いです」(飯島栄治七段)
「依頼された原稿を書きつつ、次の対局に向けての研究を行っています」(上村亘五段)
このように、まず考えられるのは書籍、雑誌に向けての執筆だろうか。新刊をファンに届けることで、結果として読書に時間を要し、不急の外出を減らす効果もある。
また最近、とみに注目を集めているのがオンライン上での活動だ。AbemaTVが放映しているチーム戦はもとより、急遽放送が決まった棋士の自宅からのオンライン対局も、多くのファンから支持を集めた。YouTubeなどの動画中継サイトを利用して、自ら番組配信を行っている棋士もいる。