試合運営に際して、スタジアムの外側を含めた3つのゾーンにわけて、ルールが作られている。
・ゾーン1: グラウンド周辺
・ゾーン2: 客席を含めたスタンド部分
・ゾーン3: スタジアム外部
選手を含めて、各ゾーンに同時刻にいられるのは最大でも117人、3つのゾーンの総計は322人が上限。さらに、試合日には7つの時間帯に区切られ、時間帯ごとの人数と役職(業種)まで詳細に決められている。
例えば、ゾーン1の「グラウンド周辺」について見てみよう。
このゾーンはピッチ、ピッチ脇に設けられているベンチ(と監督が立って指示を送るためにあるベンチ前のテクニカルエリア)周辺、ロッカーからピッチまでの動線、ロッカールームから構成される。
カメラマンは3名のみ、ベンチ選手はマスク、監督には1.5mルール……
選手がスタジアムに到着する前にロッカールームでユニフォームなどの準備をするスタッフの数から選手がスタジアムに入る時間まですべてが決められている。またコロナ前であれば目玉カードでは150人近くになるグラウンド脇のカメラマン。彼らはわずか3人(!)しか入場が許されず、スタジアムに滞在できる時間まできっちり制限されている。
ゾーン2やゾーン3も同様に7つの時間帯にわけられている。ゾーン3の「スタジアム外部」には中継のための精密機器が内蔵されたトラックのような中継車が停められているのだが、その車内の人員配置や飛沫感染等を防ぐ設備まで細かく設定されている(*密閉空間であるため)。
まだまだ色々なルールが決められている。試合中にベンチに座る選手たちはマスクをするか、他の選手との間に仕切りを設けること。監督もマスク着用が義務づけられるが、指示を送りたい選手やスタッフと1.5m以上の間隔があいていれば、マスクを外した状態で言葉を発してもよい……。すべて読むと雑誌1冊分に匹敵するかのような膨大な量になる。
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Jリーグ再開へ学べることは?
ここからわかるのは、あらゆるケースを想定して、かくも詳細なルールを決めていたからこそ、ドイツ政府がGOサインを出したということだ。
見逃せないのは、このタスクフォースに似たような存在として、日本にはNPB(日本野球機構)とJリーグが合同で設立した「新型コロナウイルス対策連絡会議」があるという事実だ。
この会議は、コロナから観客や選手・スタッフを守りながら、プロスポーツの社会的役割や責任を果たすためにあるという。
2018-19シーズンのブンデスリーガの平均営業収益は、約257億円。2018年のJリーグのクラブは約47億5000万円(NPBは非公開)。両者には、実に5倍以上の差がある。
それだけの差があるからこそ、同じような準備はできないと考えるのか。差があるからこそ、そこから少しでも多くのことを学ぶべきだと考えるのか。
全ては、かかわる者たちの姿勢次第である。
<※日本時間の5月10日の未明、追加のPCR検査の結果を受けて、2部リーグのディナモ・ドレスデンの選手とスタッフの14日間の強制隔離が決まった。彼らは1試合から3試合の延期(あるいは中止)を余儀なくされた。「この状況で現在の試合プランがゆらぐことはない。我々は長きにわたって、計画に沿って働いてきたのだから」と、リーグを運営するDFLのザイファートCEOは語っているが、まだ楽観できる状況ではないことを最後に付け加えておきたい。>