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救急車の「たらい回し」はやや緩和、延期していた手術は「再開したい」 志賀隆医師に聞く“救急現場のリアル"

2020/05/14
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 4月中旬頃、救急車で運ばれた患者の受け入れが何十件もの病院に断られるという「たらい回し」が続々と報じられた。病院は新型コロナ対応で、受け入れのキャパシティが減少し、新型コロナウイルス感染症を疑う発熱症例だけではなく、他の、救命が必要な急性期疾患も断られるという事象が多発していたのだ。 

 マスクやガウンなどの物資不足も、病院の受け入れキャパシティに深刻な影響を与えている(医療物資不足は、3月に筆者が行った忽那賢志医師へのインタビューでも報じた)。 

 現在の医療現場はどうなっているのか、国際医療福祉大学成田病院救急科の志賀隆医師に話を伺った。また、これはあくまで千葉県の状況であり、検査や病院のキャパシティには地域差があることをあらかじめ明記しておきたい(放射線科医、医療ジャーナリスト、松村むつみ)。 

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志賀隆医師

※このインタビューは4月30日(木)にZoomを使い実施しました。

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「救急崩壊」はやや緩和 

──4月中旬頃、救急車の「たらい回し」が報道されましたが、4月下旬頃から全国および千葉県でも新規発生患者数、実効再生産数(注1)は減少に転じています。現在の現場の状態はいかがでしょうか。 

志賀 3週間ほど前に比べると、少し改善してきました。3週間前は、救急車が何十件も断られる、あるいは30km先の病院に2時間かけて搬送するようなことが頻発していました。 

 現在は、千葉県ではやや余裕ができ、人工呼吸器やECMOのキャパシティもぎりぎりではありません。ECMOは、キャパシティの4分の1くらいしか使用していませんし、人工呼吸器やECMOを使用するスタッフの数にもゆとりはあります。新型コロナウイルス感染症以外の疾患の急性期患者さんも、きちんと受け入れることができていると思います。また、千葉県は、人口の多い西側は比較的コロナウイルス感染症の発症が多いですが、東側は発症が少なく落ち着いています。 

注1……1人の感染者が平均で何人に感染させるかを示す指標。1より大きいと感染が拡大し、1より小さいと感染が収束方向にあることを示す。 

写真はイメージです ©iStock.com

──余裕ができた理由はなんでしょうか。 

志賀 ひとつは、自粛の効果が出ているのかもしれません。加えて、千葉県では感染症の病床が増え、新型コロナウイルス感染症を受け入れるキャパシティが増えています。軽症・無症者の滞在用にホテルを使用していることも病床に余裕ができた一因です。 

 保険点数が上がり、医療機関がコロナウイルス感染症の診療を受け入れやすくなったのも影響していると思います。 

 当院は3月に新規開院したのですが、感染症病床は、当院でも、もともと新型コロナウイルス感染症のために作ったのではなかった病床を何十床か新型コロナウイルス感染症用にして、受け入れています。また、4月や5月といった時期は、もともと季候も良いことから急性疾患の患者さんが少なく、病院の病床使用率がもっとも1年で低い時期でもありますので、それも、余裕ができた原因のひとつかもしれません。 

──コロナウイルス感染症用の病床とは、どういった病床ですか? 

志賀 感染のリスクがあるので、他の疾患の患者さんたちは受け入れず、コロナウイルス感染症の患者さんだけが入院するような病床です。担当する看護師も、院内感染を防ぐために、コロナウイルス感染症の患者さんだけを看ています。新規開院した病院ですので、重症ではなく中等症の患者さんを主に受け入れています。