文春オンライン

救急車の「たらい回し」はやや緩和、延期していた手術は「再開したい」 志賀隆医師に聞く“救急現場のリアル"

2020/05/14
note

ホテル利用、自宅待機はどうなっている?

──自治体のホテル活用、自宅待機などの問題はどうなっていますか。 

志賀 ホテルの活用は、自治体によって運営の仕方が違うようです。大阪では、最初から軽症者はホテルに入る場合もあるようですが、新型コロナウイルス感染症は、発症後1週間くらいで急激に増悪することがあるので、千葉県は最初は全例入院させて、最後のPCR検査をホテルに移って受けていただく、という方針にしています。ただ、現在、最初の入院先に空きがなく、自宅待機も出ているので、訪問診療などのプロジェクトが立ち上がっている地域もあります。個人的には、自宅待機の方にパルスオキシメーター(注2)を貸与するのがいいのではないかと思っています。 

注2……皮膚の表面(指先など)から、血液の酸素飽和度を測定するモニター。新型コロナウイルス感染症では、軽症でも肺炎が急に進行することがあり、肺炎が進行し呼吸困難がすすむと酸素飽和度が下がり、重症化する症例を見つけられる可能性がある。 

ADVERTISEMENT

写真はイメージです ©iStock.com

──マスク、ゴーグル、ガウンなど、医療機関の物資はどうでしょうか。 

志賀 まだ足りているとはいえない状態です。通常、感染症の患者さんは、1患者1マスクが原則です。第1種感染症指定医療機関(注3)である当院は恵まれている方なので、感染症病棟や疑い患者ではそれができていますが、他の患者さんに関しては、1日1マスクとなっています。感染症患者でも1人1マスクができていない病院もあると思います。

 備蓄がいつなくなるのだろうという懸念は当院でもいつも持っています。県から支給されるほかは、グループ本部の管理部門が購入に尽力しています。 

 今は、サージカルマスクに関しては、なんとかなっていますが、依然として足りないのはN95マスクとフェイスシールドです。N95マスクを再利用している病院もあります。N95マスクは、エアロゾルが発生しやすい手順(気管挿管、喀痰吸引など)のときや、患者さんと病室で15分以上接するときに使用します。通常の診察では、患者さんがマスクをしていれば、サージカルマスクで対応します。

 関西だと、ゴミ袋をかぶって診察している病院もありますが、千葉はそういう状態ではありません。 

注3……法律で定められる1類感染症(エボラ出血熱、ペストなど)、2類感染症(SARS、鳥インフルエンザなど)の患者を診療する医療機関で、都道府県知事が指定する。 

──PCR検査は拡充されてきていますか。 

志賀 拡充されてきていますが、地域によると思います。東京は足りないようですが、千葉は発症数が少ないので検査数が不足していることはありません。当院は、PCR検査を院内で実施しており、保健所へ依頼したPCR検査の件数よりも、院内で実施した件数が4倍くらい多いですが、それでもまだ空きがある状況です。民間検査は使用していません。 

 院内で、発熱があったり、CTで軽い肺炎があったりする症例にも、現在、ストレスなく検査ができています。千葉では、ドライブスルーやウォークスルーはやっていませんが、全国では地域の医師会でやろうとする動きがあるようですね。