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創業56年の“密かな人気店” 所沢の中華料理屋で「400円のラーメン」を頼んだら、常連に愛される理由がわかった!

B中華を探す旅――所沢「栄華」

2020/05/22
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 なお、奥の厨房で調理していたご主人は、餃子が出た段階で外に出て行ってしまったため、以後は奥様、そして男性との世間話大会となった。

 男性「ここはね、市長さんも来るんですよ。所沢市長も」

 奥様「前からちょこちょこは見えてたんですけど、2日続けて見えたりね。食べてくださったチャーハンの写真をフェイスブックに載せてくださったり」

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 男性「所沢市役所まで出前に行ってるんだよね」

 

カリッと焼き上がった餃子でビールが進む

 つい話に意識が傾いてしまったが、カリッと美しく焼き上がった餃子もなかなか。野菜がたっぷり入っているのでしつこさを感じさせず、ビールがぐいぐい進んでしまう。

 現在もスーパーカブで出前をしているというご主人の東原孝さんも、奥様の初子さんも、ともに福岡の出身。お見合いで知り合ったが、「小学校は別だけど、中学校は一緒」というような距離感だったそうだ。都会に憧れていた孝さんが先に上京し、あとから初子さんも出てきた。

 

「(主人は)昔の田舎の言葉で“にあがりもん”ちゅうんですけど(笑)。好奇心が強くて、冒険心とかいろいろ」

 方言の通じ合う仲同士、二人三脚で店を切り盛りしてきた。所沢でいちばん古い飲食店街だというこの一角にお店を開いてから、もう56年ほどになる。

ご主人は“ふらっと”どこへ?

 ところで、ずいぶん前にふらっと出て行った孝さんは、どこへ行っているのだろう?

「いま、リハビリに行ってるんですよ。ちょっと転んじゃったから」

 
 

 実は少し前に何度か電話をかけてみたのだが、誰も出なかったことがあったのだ。おそらく、それが転んでしまった直後だったのだろう。とはいえわずか数カ月で回復し、出前に駆け回っているのだからたいしたものである。

 さて、話が盛り上がって思いのほか長居をしてしまったので、そろそろラーメンを注文することにしよう。