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水商売を辞めさせてもらえない日々が続く

「わたしにしかできない仕事っていうのがあったから、なかなか辞めさせてもらえなかった。1回、“辞める”って言ってみたんですよ。“夢追いかけてみようかな”って言って、“辞めたいです”ってつづけたら断られたんですね」

 水商売の世界は縦社会、上の命令は絶対である。

 なかなか辞めさせてもらえない。それでも歌手でやっていきたい。

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 レインにとって絶対的な存在である上司ゆえに、退社はなかなかできない。

 そこでどうしたか。

「逃げちゃったんですよ。いままでの感謝を書いた手紙を置いて」

 遠方の地方まで逃げた。

 1カ月後、東京にもどり、ある街のある店で歌手のスタートをきった。

「そこのお店はホストがいて生バンドとダンサーのショーがあって、ターゲットは深夜からのアフターの女の子たちです」

アフターのキャバクラ嬢相手にステージデビュー

©iStock.com

 キャバクラが終了して、店の子たちと客が外で落ち合い、食事したり酒を飲むことをアフターという。レインのいた店は、キャバクラ嬢がアフターで客と来るようなところだった。

「歌は3ステージあるんですけど、その間は、お客さんの席に座らなきゃいけなくて、指名も入れば接客もしなきゃいけなくて、それがあんまりわたしには合わなかったみたいです。お酒も飲まなきゃいけないし、接客もしなきゃいけないし、いい環境ではなかったですね。とにかく毎晩飲んでました。一晩で3本空けたこともあります」

 関東地方のフィリピンパブ数店のステージを転戦、そして六本木の本格的なライブハウスに立つ。

「喉はポリープでもう2回手術してます。歌手の宿命だと思います。フィリピンパブの仕事こなして、その後ライブハウスの仕事こなすと、朝まで仕事することになっちゃうんですね。二つこなすとけっこうきついんですよね。1日2店舗。いまもやってます、週末。さっきも朝6時まで仕事してました。いまがすごいベストですね。

 去年、1人女の子がボーカルやめるから新しいボーカルを探してたんですよ。そしたらラッキーなことに採用してもらって。それがこの前のお店です。ノリがいいですね、みんなね。大使館の人だったりするんで、飲み方もきれいですよ。お金持ってるし。いますごくいい感じに仕事してます」

 この前会ったときは、店の仕事を手伝っていたが、現在は歌手としての活動になった。

 先ほどから気になっていたのは、21歳のときに入れたという胸から腕にかけてのタトゥである。薔薇とカラスの絵柄が素肌を彩っている。

「カラスは東京のシンボルですから。それにサッカー日本代表のシンボルって八咫烏じゃないですか。後ろには鷹の羽が入ってます。あとは(腕をさして)これは水、土、炎、風みたいなのが入ってます。麻酔やらないで彫るから痛いです。これはスペイン語の歌詞ですね。ラブソング。“君は私のすべて”みたいなロマンチックな感じ。これは最近入れました。去年の10月」

「じゃあ、私が六本木で出会ったときは、タトゥを入れたばっかりだったんですか」

「そうですね。入れたばっかですね」