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 多くの企業が“選考時に重視する要素”として“コミュニケーション能力”をあげはじめるようになったこの頃(2004年、経団連による「新卒採用に関するアンケート調査」では、コミュニケーション能力がその他を抑えて1位になった)、修二はコミュニケーション能力に長けた高校生として描かれている。そして、“うまく立ち回りながら心の中では違うことを考えている修二”をわかりやすくするために、劇中では暗い光があてられる演出がなされる。

亀梨和也 ©文藝春秋

 文武両道でなんでもできる人気者。このままいけば就職活動もうまくいき、一流総合商社にでも入社できそうな修二だが、空虚さも感じている。弟には「俺みたいになるなよ」と言い、その理由を「要領ばっかよくて、何も創れない大人になるな、ってこと」と加える。そして同じ3話のラストはこんなモノローグで終わる。

「俺は不安だった。何もない自分がものすごく不安だった」

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 ただコミュニケーション能力が高いというだけではなく、周囲が見えすぎているがゆえに、自分がそれだけの人間であるということに気づいてしまっている。だからこそ、不安や寂しさが生まれる。

修二というキャラクターは「亀梨和也が演じたからこそ」生まれた

 この作品が連続ドラマ2作目であり、初めてアイドルにあてて書くこととなった木皿泉は、この修二像を亀梨和也が引き出してくれた、と語っている。

「描いているうちに、人の寂しさがテーマになっていったのは、修二役の亀梨さんが引き出してくれたから」(『ダ・ヴィンチ』2019年10月号)

亀梨和也 ©文藝春秋

 そして、「亀梨さんをすごいなと思うのは、スターなのに顔を消すことができるところ。(中略)スターなのに、演じるときは亀梨和也が消えている」と加え、それに対して亀梨は「自分がスターだとは思いませんが、いちばん努力している部分」と語っている(同書)。拙著『ジャニーズは努力が9割』の亀梨和也の項目でも触れたが、亀梨は山下智久や赤西仁のスター性に直面し、自ら“かっこよさを作っていった男”である。そして作ったものは、生まれ持ったものではないがゆえに、あえて隠すこともできる。

 2005年当時のKAT-TUNがよく歌っていた『ハルカナ約束』という曲にこんな歌詞がある。

「仮面をつけた大人が 同じ服で歩いてる 君の夢がそこに消えないように」

 亀梨和也はスターという仮面を、修二は大人という仮面をつけたり外したりすることができる人物なのである。だからこそ、修二というキャラクターは亀梨和也が演じたからこそ生まれたのかもしれない。