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以上のような支給要件の変更は、支給する主体となる各地方自治体などの大規模なシステム改修が必要になる。膨大な作業となるだろうし、何より改修には先立つものが必要なので、これも国の予算的な支援が必要になるだろう。

・季節感

花鳥風月を重んじる日本の季節感や暦感覚ということを考えた場合、桜の季節に合わせ和装をして入学式や卒業式に臨むなどの日本の伝統的な季節感が損なわれるおそれもある。そうなれば、「桜」を題材にする数ある「卒業ソング」の情緒が失われるかもしれない。
季節ということで言えば、毎年定期的に実施されている国民的な文化・スポーツイベントも、学校の都合に合わせて、日程変更をせざるをえない可能性も出てくる。

 

・法改正の必要性

萩生田文科相が記者会見などで度々言及するように「社会全体で考えるべき問題で各方面との調整が必要な案件」なのが、この「9月入学」という問題だ。こうした課題に対応するために、各省庁で所管する法律少なくとも33本について改正を検討する必要があるという(文科省:学校教育法、内閣府:子ども・子育て支援法、厚労省:労働基準法など)。

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家庭への追加負担

文科省の試算によると、5か月延長し、「9月入学」を導入した場合、全国の小学校から高校までの子どもをもつ家庭の追加負担は2兆5000億円だという。これまでの調査で文科省は小中高の学費や教材費などの家計負担を1年間で6兆円と算出している。大学生だと追加負担は1兆4000億円になるという。

「特定の世代に負担を強いてはいけない」

以上が主な「9月入学」を巡る諸課題である。
最後となるが、「9月入学」を始めるとすれば残された時間はそう長くない。そんな中、これだけの課題を解決するのは率直にいってかなり大変だろうと思う。とはいえ、すべて解決とはいかないまでも実際、導入が決定したら、日本の行政機構は大汗かいて間に合わせるに違いない。是非はともかくそういうものなのだから、それはそれでいい。ただ、もう一度考えなければならないのは、「9月入学」を導入することで、特定の学年・世代だけが、少なくない影響を受けるということだ。
取材に対して、霞が関の関係者は「生まれた年が少し違うというだけで、特定の学年・世代だけに負担を強いてはいけない」と深刻な面持ちで話していた。立ち止まって考えるべき言葉だと思う。