「9月入学」は教育だけにとどまらない。社会全体にかかわる問題である。
・就職・労働力
なんといっても、就職の問題だ。学生などの就活・就職・採用に関するスケジュールが後ろ倒しになる。と同時に、4月入学を前提としていた場合、企業側は採用計画について見直す必要が出てくる。関係者によると、以前、大学が9月入学に移行しようとしたことがあったが、旗を振っても企業側がまったく相手にしなかったため、頓挫したという話もある。
4月から9月に採用時期を変えた場合、移行する年度で、退職時期や入職時期にギャップが生じる。働き手の不足が起きる可能性もある。とくに、中小企業では、働き手の不足はかなり頭の痛い問題になる可能性がある。企業側は退職時期の調整が必要になってくるだろう。
そして、公務員。卒業時期を後ろ倒しにすることで、新卒者の採用時期を変更する場合、新年度の始まりに、欠員が発生するおそれが生じる。そうなると、公務員の採用試験の時期や定年退職日の変更を検討する必要が出てくる。
同様に、医師などの医療従事者も、卒業時期が変更されるに伴い、年度当初に欠員が出るおそれがある。医療機関や医療関係団体とも調整が必要になってくるだろう。
・保育
移行期の2021年4月~8月で1学年分(約50万人)多く園児をうけいれることになり、その分、大量の待機児童が発生する恐れもある。そうなれば、保護者の仕事にも影響することが考えらえる。保育士の確保や施設のスペースの確保など課題がある。
同様に、放課後児童クラブでも移行期に1学年分(約20万人)が増えると想定されている。
・各種手当の受給資格
これはなかなか課題として指摘されないことだが、就学期間の変更に伴い、各種手当の支給要件などの変更が必要になる。
変更が必要なのは、例えば、児童手当や、特定子ども・子育て支援施設に関する給付、国家公務員の扶養手当、各種遺族年金等かなりの数に上る。