COVID-19が猛威を振るう現在、日本人を取り巻く働き方はかつてないほどのスピードで変化している。当初は新型コロナウィルスの感染拡大を避ける目的で始まったリモートワーク化は、「オフィスに来なければ働けない」という固定観念を完全に覆した。
しかし働き方が新しくなっても、そこで働く人間同士のコミュニケーションがベースにあることに変わりはない。アフターコロナ時代、より確実に成果をあげるためにどのようなチームコミュニケーションが必要になるだろうか。
「最も成功したオウンドメディア」サイボウズ式の編集長である藤村能光氏の著書『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』(扶桑社)より、本文を抜粋して概観する。
【仕組み1】成果物の「できあがる過程」を共有&保存する
仕事においては結果や成果が大事であり、これを否定する人はいません。ただ、結果や成果はその仕事を成し遂げるまでの無数のプロセスがあってこそ生まれるものです。そして、この仕事のプロセスにおいては、仕事を担うひとりひとりにドラマがある。ここを見誤ってはいけないと思っています。
コミュニケーションツールを使い、みんなで仕事が完成するまでの過程を共有することは、その仕事が世に出るまでのプロセスのスナップショットを残し続けているようなものです。プロジェクトが一段落したり区切りがついたときに、ふとグループウェアを見返してみると、チームの仕事の軌跡がすべて記録されています。仕事を振り返り、新たな仕事を進めていくうえで欠かせないチームの場所になっていることに気づかされます。
次の写真を見てください。
アプリ内の企画書ひとつひとつを「レコード」と呼びます。各企画書の左側にある数字はレコード内でやりとりしたコメントの数です。ひとつの記事が完成するまでに、100以上のコメントが飛び交うこともあります。それだけ、記事ひとつひとつに注力し、チームみんなで企画をいいものにしようとしていることがわかります。
「知のプラットフォーム」づくりがチームの可能性を広げる
さらに記事管理アプリのレコードを開くと、企画の立案から記事公開までの具体的なやりとりが、コメント欄に記載されています。
取材が終わった後の記事構成案の作成で悩んでいる企画担当者に、編集部のメンバーがアドバイスをしたり、記事の執筆で迷っているポイントに対して、「こう考えてみてはどうか?」というようなコメントをしたり、編集の業務フローがわからない人には関連情報のリンクを教えたり、といった具合です。このやりとりは、編集部全体にもオープンになっていて、コメントの書き込みがあると、メンバーに通知が届きます。
こうやって編集部の誰かの課題をみんなで解決し、そのやりとりをほかの人が見ることで、課題解決とチームの経験学習がともに進みます。企画を作るために生まれたアプリが、編集部全体の「知のプラットフォーム」に変わっていくのです。
たしかに仕事の仕方は人それぞれです。「自分で考え尽くして、100%のアウトプットになるまでチームに情報を共有しない」というのも、ひとつの仕事のスタンスであり、それを否定するつもりはありません。
でも僕はオープンに情報を共有しながら仕事を進めることが、チームの可能性を広げてくれると思っています。