文春オンライン

自立した個人が自由に働く――先駆者が語るアフターコロナのコミュニケーション術

『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』より#1

2020/06/03
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【仕組み2】チームの仕事別に「決める人を決める」

 サイボウズ式編集部では「自立した個人が自由に働けること」を目指していますが、とはいえすべてを自由にして、制限をなくしてしまうと、チームでの成果を出すことがとたんに難しくなっていきます。そのときに大事なのは、「決める人を決める」ということです。僕は編集長としてサイボウズ式に関するすべてのことを決める役割を任っています。ただし、チームの成熟度に応じて、段階的に特定の分野で意思決定をする人を増やすなど、積極的な権限委譲をするようにしています。

 例えば、2019年には副編集長という役割をメンバーのひとりに任せ、今は編集部で立てた企画のゴーサインの半分以上を出してもらっています。また、サイボウズ式では記事企画以外に、イベントや動画、そのほかさまざまなプロジェクトが同時並行で進められていますが、プロジェクトのメイン担当者になるべく意思決定をしてもらうようにしています。

 サイボウズ式編集部では、チームや各プロジェクトの担当者をまとめた図を、キントーンのお知らせページ(トップページ)に記載しています。これにより、編集部のメンバーが「今、何のプロジェクトを手がけていて、どれだけの仕事量を抱えているか」がひと目でわかります。

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「決められる人」はひとりに偏らないほうがいい

©iStock.com

 それをもとに、負担のかかっている人がいれば、チームの別の人に担当してもらえないかなどを気軽に相談できるようにしています。

 プロジェクトが始まったタイミングでは、誰がそのプロジェクトの舵取りをするのかが明確ではない場合があります。ブレインストーミングやアイデア出しを進める段階では、あえてメインの担当者を決めなくても物事は進んでいくからです。この過程を経てプロジェクトの実施が決定すると、あらゆる意思決定のスピードを上げ、迅速にチームで仕事をしていく必要があります。そのためにも、体制をしっかりと可視化して、もしプロジェクトに何かしらの変化があれば、すぐに体制を更新して、みんなにお知らせすることが大切です。

 このように各プロジェクトのメイン担当者を定めていくと、編集長である僕がすべてを決める必要がなくなってきます。そして、なるべく「決められる人」がひとりに偏りすぎないほうがいいと思っています。常に自分がすべてを決定するようでは、チーム力は永遠に上がってきません。リーダーやマネジャーが仕事のボトルネックになるのは、絶対に避けたいところです。